お題

□05.震える手
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みっともなく震える手を、山本に気づかれないようにキツく握り締めた。

山本は今日あったことを楽しそうに話しながら俺の隣を歩いている。
本当に楽しいのか、大きく開けた口、楽しげに細められた眸。

俺は柄にもなく緊張していて、僅かに震えてしまう指先をポケットに隠した。
立ち止まれば、全身が竦んでしまいそうなほど。


「なあ獄寺、明日も一緒に帰れるといいな!」


深い意味は無いなんて分かりきっているから、山本から顔を逸らして俯いた。
ポケットの中の拳を更に固くする。


「バーカ、今日は偶々だって言っただろ。明日はねーよ」

「そんなつれねーこと言うなよー!」


そう言って肩を抱く。顔を寄せる。

肩を抱く手を振り払う手も、寄せる顔を押し退ける手も、震えているせいにして振り払わない。

もう少しこのまま……。

もうポケットの中の手は然程震えてもいないんだ。



End

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