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□運命を信じますか
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※過去捏造 春歌←嶺二
※嶺ちゃんキャラちょっと違う


あれはいつの日の事だっただろうか。


僕がまだ早乙女学園に入りたてで、目標もあやふやでよくどこだかわからないまま…ただ無我夢中になって突っ走っていて…。



「嶺二!学園は休みなんでしょ!ちょっとは店の手伝いをしなさい!」

「わかってるよ母さーん。」



アルバイトで店の手伝いをしていて、自分のお金を貯めていた。

まだこの頃の僕には芸能界という世界は想像がつかない大きな世界だった。だから、デビューを目指すといってもどうなりたいのかさえよくわからなかった。


でも、僕はいつもと同じ生活にはちょっと飽き飽きしていた。
だからその時は、ただ刺激を求めて早乙女学園にいたような気もした。


「こんにちはー。」

「あら春ちゃん、おつかいかい?」

「うん!ハル、おつかいしてるの!」

「偉いねーハルちゃん!」


入り口から母さんと子供の声が聞こえてきた。
知ってる顔なのだろうか?大きな母さんの背中に邪魔されて顔が見えなかったから、僕は自分から近づいていった。



「あ、嶺二!ちょうどよかったわ、春ちゃんの接客よろしくね!」

「え、ちょ、接客って…、」

「あんた、芸能界に入るんでしょ?なら誰にでも好かれるアイドルにならなきゃいけないじゃない!」



アハハと笑って母さんは店の奥に消えていった。なんだよ…僕にこんな子供の相手なんて…できるわけないでしょ!


とにかく小さな女の子は僕の顔をジーッと見つめてポカンとしていた。あはは…僕も今の状況にポカンとしてるよ。


「お兄ちゃん、アイドルなの?」

「ううん。まだ新人だよ。」

「しんじん?」

「そう、新人。まだアイドルなりたてなんだ。」

「ハルも小学校二年生なりたて!」



ブイッと僕に向かってピースしてくるハルちゃんという女の子がつい微笑ましくなった。

可愛い、素直にそう思った。


「お兄ちゃん、おうた歌うの?」

「うん、いつかCDだすよ。」

「本当!?」

「あぁ、本当だよー!そして大物になるのさ!」

「すごいすごーい!」



目をキラキラさせて輝かせてるハルちゃんに僕はなんだかうれしくなった。

まだ決まってない僕の未来にこんな事で喜んで尊敬してくれる子がいるなんて、なんだか僕はくすぐったかった。



「ハルね、ピアノひけるの!」

「おぉ!すごいねハルちゃん!」

「うん、だからハルね、お兄ちゃんのおうた作りたい!」

「え……?」



ニコニコと話すハルちゃん。そうか…、僕の歌を作りたいのか…。


「本当!?ならお兄ちゃん、もっと歌うまくならなきゃね!」

「うん、だからお兄ちゃん、ハルが大きくなるまで待っててね!」



その笑顔が眩しかった。

なぜだか、僕はアイドルも悪くないと思えた。

僕のこと、こんなにもキラキラした目で見てくれて…僕をめざしてくれるなんて…とっても嬉しかった。


このつまらない毎日にまるで光がさしたかのようで…とっても僕は生き生きとしていた。



「お兄ちゃん、約束だよ!」

「あぁ、なら約束しようか!」

「ハルね、ななみはるかって言うんだ!」

「ななみはるか…ね!よしっ!お兄さんバッチリ覚えたぞ!」

「ありがとお兄ちゃん!なら、またね!」



ゆびきりをして笑顔で手をふると、ハルちゃんは走って帰ってしまった。

その姿は今でも鮮明に覚えている。


そしてその後、ハルちゃんがおつかいに来たことを忘れてると思ったのも。



***



「もーう、社長おー。僕がマスターコースの先輩だなんていきなりビックリですよ〜。」



あれからどのくらいたったのだろうか、自分もついには先輩と呼ばれるまで成長して、今では現役アイドルまっただ中だった。


「ハハハー!これもミーからのサプライズデスヨー!」

「本当!?もう嶺ちゃんチョー嬉しー!で、その後輩ちゃんって誰なの?」

「ハハハー!実はユーの後輩になる作曲家の子は来てるんデスヨー!入りナサーイ!」



社長室のドアの方に叫ぶと、ガチャリとドアが開き女の子が出てきた。



「こんにちは、これからお世話になります。七海春歌です。」

「七海…はる…か?」

「ハハハー!これからユー達の絆をガッチリ繋いでチョーダイ!」



そう言うと、社長は部屋から出ていってしまった。


そして、残された僕らはお互いを見合う。



「え、あ、は、はじめまして!後輩ちゃん!」

「寿先輩、お久しぶりです。」



え……?
僕は思わずポカンとしてしまった。



「やっと追い付けました。」

「あ、あの……。」

「ずっと寿先輩の背中を追い掛けてました。だから…後輩になれて本当に嬉しいです。」



ニコリと可愛い笑顔を見せた。

僕の心臓はドクリと大きく音をたてた。



「あの時の…子?なの…?」

「はい、だからこれからお願いします!」



そういって今にも折れそうな小さな手が僕の大きな手を包み込んだ。


「やっばい…な。」

「?」

「…運命とか…信じないけど…。」



そんな憧れや尊敬の目で見られるほど、勘違いしそうになるじゃないか。



運命を信じますか
(寿先輩?)
(よ、よしっ!ならハルハル、これからよろしくぅ!)
(はい!お願いします!)
(か、可愛いすぎでしょ…!)

end

嶺春ちゃんの過去がこんなんだったらいいのにね←

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