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□夢の中に溶け込んだ
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※早乙女学園時代 ちょっと音也弱気


「ミーはユー達には期待してましたのヨー?」

「……はい。」

「なのに…とってもとっても残念デース!」



学園長、シャイニング早乙女の前に俺たち…七海と二人で立っている。

なんでかって?そう、俺たちは好きになってしまったのだから。


お互いを、もっともっと深く求めるぐらい。



「どう落とし前つけるんですカー?」

「………、」



俺は何も答えられなかった。ここで変に反論したら、学園長の逆鱗に触れ、俺達二人がどうなってしまうのかわからなかったから。



その時、そんな思いが強い俺が前のめりになっていた。

だけど、七海は違ったんだ。



「学園長、私を退学処分にしてください。」

「七みっ……!?」

「ホゥ…それで許されると思ってンデスカー!!」

「いいえ、ですが…悪いのは私なんです。」



その目は、いつも弱々しいあの七海からは想像できないほど真っすぐで、学園長に精一杯立ち向かっていってる目だった。



「ナンデスト?」

「私が一十木くんにつめよったんです。」

「七海、それは違っ……!」

「Mr.イットキは黙ってナサーイ!」



学園長に阻止され、七海はサラサラと喋っていく。


違う、違う。レコーディングルームでキスしたのは俺からだ。

七海はキスしたいって言ったら、いいですよ。と笑顔で返してくれただけなんだ…なのに…なのに!


俺は今何も出来ない……。



「一十木くんに歌ってもらう曲を作りたくて…。だからキスをしてって言ったんです…。」

「インスピレーションを感じるためデスカー?」

「はい。ですが…もっと…求めたのは…私なんです…。」

「違う!七海はそんな事してない!」

「ムムムッ、どっちが本当なのか言ってくだサーイ!じゃなきゃ二人供退学でーす!」



学園長の怒るのもここらが限界だろう。

俺も反論しようとした。


だが、その時だった…


七海が学園長に見えないように、俺の小指と七海の小指を絡めてきたのは。


そうしてニコリと笑ってきた。



「学園長、一十木くんは…私を守ろうとしてくれました。」

「Ms.七海。嘘なら嘘と言え、さもなくばお前は退学となってMr.一十木とは二度と会えなくなるぞ。」



学園長の口調が変わった。これは怒りがピークの証拠だ。

この学園長は正直俺だって怖い。


なのに、七海の目は真っ向から学園長に立ち向かっていた。



「わかってます。だけど、事実なんです。」

「……そうか…。ならMs.七海。お前はこの早乙女学園から即退学してもらう。」

「……はい。」



ニコリと笑った七海。だけど、俺はもう我慢できずに口を開いた。



「七海!俺は…俺はどうすればいいんだよ!?七海がいなくて…七海の歌が歌えなくて…、」

「一十木くん。」



振りむく七海の顔は笑顔だった。だけど、とても痛々しくて見ていられなかった。



「学園長先生、最後に一十木くんとお話していいですか?」

「むー、いいでショー!別れを惜しむがイイデース!」

「ありがとうございます。」



そういうと、七海はふわりと俺の手を両手で包み込んできた。

まるで、その温かさが溶けてなくなってしまうかのように…。



「一十木くん、短い間だったけど…一十木くんのために曲を作るということが、本当に幸せでした。」

「七海っ……、」

「私は…一十木くんの歌を…世界中の人に届けたいと思ってました。」

「…………っ、」

「だから…一十木くんは歌うことを…やめないでくださいね…そして…、」



七海の頬にツゥと涙が流れた。
それは次々とあふれ出てきて止まらず俺まで泣きそうになった。


だけど、七海は笑いながら言ってくれた。



「私のこの願いを叶えてくださいね。」

「……七海、俺…絶対…デビューするから…だから…、」

「大好きです、一十木くんも一十木くんの歌も。」



そういって七海は扉の向こうに消えてしまった。


俺の手には焦燥感と七海の手の柔らかなぬくもりが残っていた。


俺が言えなかった言葉。
君がいなくなってしまって言う意味もなくなってしまったけど、もう一度言うよ。


七海、俺絶対…デビューするから、だから…









そしたらもう一度俺と付き合ってください。


その言葉は、誰もいない学園長の部屋にとけてなくなった。



夢の中に溶け込んだ

(七海の姿はもう見えなかった)


end

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