short story

□天使は小悪魔だった
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「好きです、姫先輩。」



それは片付けをしている時だっただろうか。

あたしは二人きりの部室で狩屋くんに告白された。



「え、え?か、狩屋くん?」

「サッカー部に入った時から、ずっと好き…でした。」

「ど、どうしたの?」

「だから…俺と付き合ってください。」



どうせいつものように、「なーんて。冗談ですよ。」と言ってからかってくる。


きっとそうだと思ってた。


だけど、目の前の狩屋くんはあたしの知らない…見たことのない狩屋くんだった。



「え、っと…その…。」

「姫先輩…、返事は…?」

「ちょっ、狩屋くん!」



あたしの手を掴んで指を絡めながら、少しずつあたしの方に体重をかけてくる。


いくら狩屋くんが年下といっても、狩屋くんはやはり男の子で、あたしが力でかなうはずもなかった。



「姫先輩、俺…。」

「ちょっ……んあっ、」


気付けば狩屋くんの唇は、もう目と鼻の先にあった。

首筋にかかる狩屋くんの吐息がくすぐったくてあたしは思わずたじろいでしまった。


「好き…です…姫せんぱ…、」

「ご、ごめんなさいいいぃ!!」



ドンッ!と鈍い音がすると、狩屋くんは机に激突していた。

気付けば、あたしは狩屋くんを突き飛ばしていて、その場から逃げ出してしまった。



「先輩、待って!」



そんな声も聞こえたが、あたしは無視をして走りだしていた。



***


次の日



「はぁ…もう…。」

「どうしたんだ姫?朝練の時から元気ないじゃないか。」

「霧野……。」


おもわず、机で大きなため息をはく。


霧野は心配そうにあたしの顔を覗いてくるが、今は何もしたくない気分だった。



「悩み事があったら聞いてやるぞ。まぁ、無理にとは言わないが。」

「………。もしさ、霧野は意外な人に告白されたらどうする?」

「ん?もちろん、その場で返事をするけど?」

「あ、やっぱり……。」

「普通そうだろ、告白してきた人がせっかく勇気を振り絞って言ってくれたのに可哀想だろ。」

「そっか………はぁ…。」



やっぱり普通はそうだよね。

せっかく狩屋くんが告白してくれたのに、あたしなんか狩屋くんを突き飛ばしちゃったし…もう狩屋くん、あたしの事嫌いだよね。


でもそう考えると、なんだか胸がギュッと苦しくなる。



「ま、早く返事はしてやった方がいいぞ。狩屋と姫の為にもな。」

「な、なんでそう狩屋くんだって断定できるのよ!」

「だって、お前らわかりやすすぎだから。」

「な!なにがよ…!」

「何?言ってほしいのか?」


そういうと、霧野は意味有りげな笑みをニヤリと見せた。


「い、いや…遠慮します…。」

「ははっ、まぁ冗談は置いといて早く解決しろよ。」


ポンッとあたしの肩に手を置くと、霧野は神童のところに行ってしまった。



***


帰り、あたしは日直だったのでいつもより遅くに教室を出ることになってしまった。



「あー、なんで日直なんてあるんだよ…今日部活休みなのに…。」



今日は憂鬱な日だな…。とかごちゃごちゃ考えてると、あたしの携帯がピカピカと光っていた。



「メール、きてるのかな?」


開いてみると、そこには一通だけ見覚えのある名前からメールが来ていた。


2012/4/○ 16:00
from 狩屋マサキ
subject 先輩
────────────
先輩、よかったら一緒に
帰りませんか?
校門で待ってます。
────────────



「このメール…四時に来たの…?」


あたしはフッと時計をみると、針はもう五時過ぎをさしていた。



「は、早く行かないと…!」



だがしかし、走ろうと思った時、足はピタリと止まってしまった。


校門でなんて言われるのだろうか。


やっぱり、あの告白を取り消してとか言われるのか…それとも、あの告白はうそだとも言われるのだろうか。



悪い事を思えば思うほど、足がすくんでだんだん動けなくなっていった。



「やっぱり裏の門から帰ろう…。」


そう思って方向をかえた時だった。



「なに違うとこ行こうとしてるんですか、姫先輩。」

「か、狩屋くん!?」

「ったく、ひどい先輩ですね。ずっと待ってたのに。」

「か、狩屋くん、その…。」

「ほら、帰りますよ。」

「え、あ、ちょっ…!」


あたしは狩屋くんに反論する暇もなく、手を握られて一緒に帰ることとなってしまった──────。



「……………。」

「……………。」



あたしと狩屋くんの間には会話はなく、ただ周りの音がザーザーと流れているだけだった。


さすがに気まずいと思ったあたしは、意を決して狩屋くんにはなそうと思った。



「あの、狩屋く「先輩。」


あたしがしゃべった瞬間、狩屋くんも同時にあたしの声に重なった。



「この前はごめんなさい。別に俺、大丈夫ですから。」

「え?」

「姫先輩が俺の事嫌いでも、俺…絶対姫先輩を振り向かせますから。」

「狩屋く…ん?」

「だから、ゆっくりと俺の事知っていってください。」



そういう狩屋くんは笑っていたけど、とても痛々しい笑顔で、あたしの胸もとても痛んだ。



「だから……、」

「違うの、狩屋くん…。」

「え……?」

「この前のは…ちょっとビックリして戸惑っちゃっただけなの…。」

「でも…俺が無理矢理キスしようとしたら嫌がって…。」

「あれは…その、恥ずかしくって…。」



何言ってんだ自分!と思う頃には恥ずかしさがピークに達していて、あたしはフイッと狩屋くんから目線を反らした。



「あたし……狩屋くんが…す、好き…。」

「え…。」

「だから…その…付き合ってくだ…キャッ!」



体に大きな衝撃が走った。

その時気付いた、あたしは狩屋くんに抱き締められているんだと。



「バカ…姫先輩のバカ…。」

「……ごめん。」

「俺、ショックだったんですからね。」

「……ごめん。」

「でも、両思いなら…昨日の続きしていいんですよね?」

「え…?」



狩屋くんはニヤリと笑うと、チュッとあたしの唇にキスをしてきた。


「んっ……、」

「ずっと…姫先輩にこうするのが夢だった…。」

「うん…。」

「大好きです…姫先輩。」

「あたしも……んんっ、」

「っはぁ…。」



いろんな感情がぶつかり合う激しいキスをした。

チュッと舌を吸われて変な声がでてしまうが、そんな事どうでもよくなるぐらいあたしは頭がぐるぐるしていた。



「へへっ、これから彼女なんですね。姫先輩。」

「うん……。」

「明日楽しみですね、サッカー部の反応。」

「ば、ばか!あまり言わないでよ!」

「さぁ?どうしましょう?」



後輩のクセに、少し上な狩屋くんに翻弄される日々はまだまだ続きそうだけど、こんな日常も悪くないと思ってる自分もまたどこかにあった。



天使は小悪魔だった
(あ、やっぱりお前ら付き合ってるだろ?)
(だから、なんで蘭丸は断定できるのよ!)


end

20万記念for神楽様

リクエストありがとうございました!狩屋くんって可愛いですよね(^ω^)狩屋くんがデレる話は夢優ガチで大好きです(キリッ)←なんだか友情出演で蘭丸さん出てますが、この二人大好き!←という個人な意見です、はい←とにかく、リクエストありがとうございました

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