short story

□ムーンライトに包まれて
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「兵頭さんには確か備品を買っておいてって…、あと一文字は後でケガしちゃったから手当てをして…あと真田にも…。」

「…………なぁ。」

「何、月島?」

「お前、マネージャーだからって甘すぎではないか…?」

「………そう?普通だと思うけど…。」

「よっ、姫。」

「あ、南沢さん!」

「わりぃんだけど、姫後で一緒に来てほしいとこがあんだよ。」

「はい、どこですか?」

「保健し…、」



気付けば、自分は南沢に向かってこの上ない怒りを示して追い掛け回していた。


姫は大切な彼女だ。だが、月山国光皆のマネージャーとも言える。


マネージャーだからチームを支えるのは当たり前。だが、皆も姫は女だからちょっとは好意を抱いていて、たまに複雑になる。



「何を考えておるのだ月島?」

「一文字か…。」

「まぁ、視線は一点しか向いていないがな。」

「………その腕。姫に手当てしてもらったのか?」

「……まぁ…机にちょっと当たっただけだが、姫がどうしてもと申すから…。」

「一文字!もう腕大丈夫?」

「あ、あぁ姫か。先ほどは真に申し訳ない。」

「よかったぁ、一文字このままサッカー出来ずに死ぬかもしれない!とか言って痛がってたから心配したけど…練習に支障でない?」



その姫の発言を聞いて、一文字の腕をギュッと掴み代わりに俺は答えた。



「大丈夫だ姫、机にぶつけただけだ。そんなやわではない。」

「いっ!いっ!痛い!つかむ力強すぎだ月島!」

「ほら、この通りな?」



よかったぁ。と笑う姫に俺も笑顔がこぼれた。

とりあえず、嘘をついた罪は重いぞ一文字。
ていうか…結局皆姫を目当てなんだろ?


あんまりチームに支障を与えないぐらいには姫と他の奴の関係は多めに見てるが、やっぱり彼氏として気になってしまう。

なにせ優しすぎるで有名な姫だからな。



「月島、練習試合頑張ってね!」

「あ、あぁ…承知。」

「フフッ、応援してるよ!」



無意識にガッツポーズをとる姫はやっぱり可愛くて、俺も照れてしまう。


隣で一文字があっつい、あっついと言ってたのは気にしない方向でいく。



***



そして練習試合が始まった。


今日はチーム戦で一人一人の連携の確認と動きを見るらしい。

俺はすぐ試合に出る組だったので配置につくと、姫がまた目に入ってしまった。

しかもあたふたしている様子で。


あいつ…何困ってんだ?


「月島っ!いくぞ!」

「お、おぉっ!」



不意討ちで南沢に声をかけられ、そのまま走りだした。

だがしかし、俺の頭は他の事に気にとられてた。



「月島!前!」

「はっ……?」


ガアアァン!と俺の頭の中でそんな音が木霊した。

なんだと思ったが、そこで俺は情けなく意識が途切れてしまった────。



***



「っ………、」

「月島……!」

「俺は何を…?」



目をあけたら、そこは保健室。

なんなんだこのマンガにありそうな展開は。だが、隣に姫がいるからまぁよしとしてやろう。



「月島、ゴールポストに当たって脳震盪起こしたんだよ!」

「………なんだか…腑甲斐ないな…。」

「え………?」



ムクリとベッドから起き上がると、姫の手をギュッと握った。

暖かい。こんなに優しく暖かい手なら誰でも頼りたくなるんだな。と心の片隅で思った。



「試合中…姫の事がきになったんだ…。」

「あたし……?」

「あぁ…そんなんで集中できなくてみんなに迷惑かけるなんて…ダメな彼氏だな。」



公私混同していては、正直姫にもチームにも迷惑だ。

つい俺はしゅんとして恥ずかしさのあまり、姫から顔を反らしてしまった。


だが、姫は繋いだ手を離さなかった。



「でも…嬉しいよ。」

「え?」

「だって…あたしの事見ていてくれるんでしょ?」



にこりと笑い、まるで自分に否がないように言ってくる。

俺は不覚にもいまさらドキッとした。



「試合中まであたしの事見ていてくれるなんて、嬉しい。」

「姫……、」

「もぅ、あたしってダメな彼女だね。いつどんな時も月島に見ていてほしいなんて考えるなんて。」



むぅと頬を膨らませる姫。

なんなんだろう…この可愛い小動物。



と考えた時には姫を抱き締めていた。



「なんだ…俺たち…同じダメダメ同士だな。」

「フフッ、そうだね。」



でも、こんなにも嬉しい。温かくて、優しい。


抱きしめた姫の肌から感じたぬくもり、だがしかし…姫はゆっくりと俺から離れていった。



「そろそろ…戻らなきゃだよな…。」

「そうだね。長居してても怪しまれるし。あたし達なら尚更ね。」

「そうだな。」

「あ、でも月島はまだ寝てて。」

「いや、もう大丈夫だ。」

「ダメ、それに…」

「それに……?」



そういう姫の顔が赤くなって、俺の方に向かず、何かと思えばドアに向かってこう言った。



「部活後…保健室来るから…。」

「…………っ!」



バタバタと姫は走っていってしまった。

俺の心臓もバタバタと騒がしくなったのは言うまでもない。


ムーンライトに包まれて
(待てよ…保健室に二人きりって…大丈夫か自分…。)


20万記念for撫子様
リクエストありがとうございました!そして申し訳ありません。月山国光の口調やキャラがよくわからず…某イラスト投稿板等で調べたのですが…人によって口調がそれぞれでキャラの特徴も掴めず月島を標準語で喋らせてしまいました。キャラも少なくすみません。一文字もなんだか怪しいですが…。もし撫子様のご希望にそわなければ直します!勉強不足ですみません。でも愛はたくさんこめました!←リクエスト本当にありがとうございました(*´ω`*)

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