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□ワルツ
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照りつく日差しの一時に
黒揚羽と待ったあの道の
ゆらゆら上る陽炎の中
在りし日の私が踊ってる

高いヒールを履き潰し
短い髪をも踊らせて
在りし日の私が踊ってる

眼には何も映さずに
独りで踊る、優雅なワルツ
躓き転び、傷つきながらも
踊り続ける、悲しいワルツ

くるくるくるり
くるくるばたり
くるくるくるり
くるくるばたり

ヒールが折れて夕闇に
髪も首に張り付いて
踊り疲れて倒れ込む
やっと映した眼の中は
宵の明星ただ一つ

もう黒揚羽もいなかった
もう陽炎もなくなった
独り残った私の影は

くるくるくるり
くるくるばたり
くるくるくるり
くるくるばたり

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