series2
□5
1ページ/1ページ
今日はハロウィンである。
ヨーロッパを起源とする民族行事で、毎年10月31日の晩に行われる。ケルト人の行う収穫感謝祭云々とかキリスト教がどうのとか、私を含めた日本のよい子達には関係無い。
ただ、魔女やお化けに仮装して、近くの家を1軒ずつ訪ねては「トリック・オア・トリート(ご馳走をくれないと悪戯するよ)」と唱えるのや、貰ったお菓子を持ち寄り、ハロウィン・パーティーを開いたりするのが楽しくて、ハロウィンを待ちかねるのだ。
「お、中々いいね!」
そのハロウィンの日の昼下がり、自室の姿鏡の前でモデル並みのポーズを決めた。
私は今、夜から始まる友達とのハロウィン・パーティーに着て行く、魔女のコスプレ衣装を合わせている。
「いやあ、自分で言うのも何だけど本当に似合うなー!これはお兄ちゃん達にも見せとかないと」
そのままの格好で一階に降りる。
居間に行くと、テレビの前に陣取っているシェンを見つけた。
「シェーン!トリックオアトリート!」
「はあ?何寝ぼけてやがんだ」
「寝ぼけてないわ!今日はハロウィンだよ?さてはシェン、知らなかったな?」
「知ってんに決まってんだろバカにすんなよ!」
「まあいいや。ね、可愛くない?魔女!」
スカートの裾を持ち上げ、くるりと回って見せると、シェンは柔らかく微笑んだ。
「おう。なかなかイイじゃねえか」
「やったー!」
「もーちょっとスタイルが良ければ言うことないんだけどよ」
「死ね」
そう吐き捨て、もう一度二階に行き、アーデルハイドの部屋へ向かった。
ノックをして呼び掛けると「どうぞ」と返事があったのでドアを開ける。
「アデル!トリックオアトリート!」
「おや、愛らしい魔女だ」
机で読書をしていたアーデルハイドは、私を舐めまわすように見て満足げに頷く。
そして棚から飴玉とチョコレートを取り出して渡してくれた。
「ありがとう!」
「そんな可愛い格好で何処かに出かけるのか?」
「うん!パーティーがあるから行ってくるよ」
私が答えると、アーデルハイドは顎に手を当てて、うーんと唸る。
「そうか…10月31日…ハロウィンは秋分と冬至のちょうど真ん中。サオインというケルトの祝日がその起源だと言われている。冬に向けてたくさんの魂があの世へと旅立ち、そしてまた異界からの訪問者が多くなる、「世界を隔てる帳が薄くなる」日。なんだが…」
「ん?どういうこと?」
「つまり、幽霊が出るけど外出していいのかな?って話だよ」
「え?嘘だよね…?」
「いや、嘘じゃない」
いかにもな顔をして言うので、怖くなる。
私は怖い話は好きだが、自分の身に怖いことが降りかかるのは嫌なタイプなのだ。
「そんなあ!どうしようトイレ行けない」
「兄ちゃんがいるだろう?兄ちゃんと一緒にお風呂に入って兄ちゃんと一緒に寝れば良いよ」
「うん…そうしようかな…お風呂は遠慮したいけど」
「じゃあ一緒に寝ような!約束だ!」
結局、外出はせずに家族揃ってのハロウィン・パーティーをすることになった。みんな喜んでいたし、良しとしよう。
その後、アーデルハイドと一緒に寝ることをそれとなく言ったら、ジェイフンと紅丸に猛反対され、居間に布団を敷き、家族5人、川の字で寝ることになった。