series2

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夏休みも半ばに入り始めた頃、やっと家族全員の休みが揃ったので、私達は紅丸の運転でウォータースライダーなどがある国内最大級のプールに来ていた。

「うちの姫様はまだなのかよ」
「女の子は時間が掛かるんですよ」

女子更衣室の方を覗き込むシェンをジェイフンがいさめた。
兄達は全員、もう既に水着に着替えている。
そんな彼等に、多くの人達が目を奪われていた。

背が高い。顔が良い。眩むような筋肉。
三拍子揃った彼等は無敵であった。

「お待たせー!」

私が着替えを終え、待ちわびているであろう兄達に駆け寄ると、他の客からの視線を痛い程に感じた。
見ると、周りに人だかりが出来ている。

「おおっ!可愛すぎるぞ!」
「本当。眩しいくらいだ」
「ありがとう。紅丸、アデル」
「何分待たせんだ。下に水着着てたクセに」
「日焼け止めとか塗ってたんだよ」
「可愛いお姫様も来た所だし、行きましょうか」
「うん!あ、ねえ、この人だかりは何なの?」

ちらっと集まった人を見回せば、沢山の女の子と目があった。
明らかに敵視されているような気がして、私は気付く。
いつも近くにいるから忘れがちだけど、みんなカッコイイからだ。

「気にするモンじゃねえよ」
「そーそー。見ちゃダメだよ、子猫ちゃん」
「そうだよね!よし!泳ぐぞー!」

浮き輪を抱えて走って行く妹を見守りながら、兄達は周りの男共に睨みを利かせながら呟いた。

「見てるねえ。汚い男が、うちの可憐な妹を」
「だからビキニは反対だって言ったのに…。紅丸兄さんが賛成するからだ」
「おら!見せ物じゃねえぞ!」
「シャイセ!あれほど可愛いとすぐにこれだ」
「おーい!みんな泳がないのー?」

人魚のように泳ぐ彼女を見て、だらしない顔をする兄達は、どこの兄よりも妹を溺愛していた。
 

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