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バレンタインを明日に控えた2月13日。
私は、夕飯の片付けを済ませた後、台所に籠もってチョコレート菓子の製作に勤しんでいた。

「ふー、混ぜるのも楽じゃないわ」

ブラウニーを作る為に小麦粉と溶かしたチョコレートを混ぜているのだが、中々に面倒だ。
チョコレートチップは値段が張るので板チョコを細切れにしたばかりだし、腕が限界に近い。
作業を止めて椅子に座り、ぼーっとしていると、ドアが開いて三男のアーデルハイドが顔を出した。

「何をしてるんだ?」
「ブラウニー作ってるんだ。明日、バレンタインだから」
「へえ、手作りのブラウニーか。楽しみだなあ!」
「え?アデル達のは無いよ?」
「…え?」
「だから、家族の為に作ってるんじゃないんだって」

私がそう言った途端にアデルの顔付きが変わった。
笑ってるけど、冷たい感じがする。

「じゃあ、それは誰の為に作ってるんだ?」

身の危険を感じる。
家の中で怒らせたら一番怖いのはアーデルハイドだ。

「と、友達だよ。流行ってるでしょ、友チョコ!みんなと約束してるんだあ!」
「へえ。なら、その一つだけ明らかに大きい箱で貰える友達は誰なのかな?」

机の片隅に置いてある、ラッピング用の袋やら箱やらを指差すアーデルハイド。
や、やばい。鋭いぞ。隠したつもりの箱が見付かるだなんて。

「あ、や、これは、」
「正直に言ったらお兄ちゃん怒らないから」
「…本当に?」
「兄ちゃんが嘘ついた事なんてないだろ?」
「うん…。あのね、これは、同じクラスの西園寺君にあげようと思って」

西園寺君ね、と言いながら、グーで箱を潰された。

「お、お兄様すみません!!!」
「はは、何を謝ってるのかな?」
「シェーン!アデルがー!!」
「なんだようるせえなあ!テレビ見てんだ!」
「バカ!ジェイフン助けてー!」
「さあ、俺の部屋に行こうか」

帰宅した紅丸が、見当たらない私を心配して探しに来てくれるまで、アデルは離してくれなかった。
 
 

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