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□DOM
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午後のティータイム。
アッシュと名無しは優雅に紅茶をすすりながら、ケーキをつついている。

「あ!そうだ!」
「?」

アッシュは好物のザッハトルテを一切れ口に入れ、鞄の中から一枚の紙を取り出した。

「SNKからどうしても出てくれって言われちゃってサ、Days of Memoriesって言う携帯アプリの恋愛シミュレーションゲームに出演したんだ!」
「ふーん」
「それはゲーム中で使われたボクの立ち絵だヨ!」

名無しは渡された紙を手に取り見ると、やたらと小綺麗なアッシュが描かれている。

「なるほど」
「結構カッコいいでしょ?」
「うん。2003よりはね」
「名無し!それは暗黙の了解で二人の中では禁句になってる筈でショ!?」
「あ、ごめんごめん」
「…まぁ、その立ち絵を見たら勿論DOMでもボクと恋愛したくなっちゃったよネ?」

アッシュは自信満々に名無しを見た。彼女が必ず肯定を返してくれると、絶対的な自信がある。

「…………それは、無い」
「……………え?」

手にしていた紙を机に置き、名無しは紅茶をぐいっと一気に飲み干した。
その動作を真っ白になった頭でぼんやりと見守る。

「それは無い」
「な…なんでなのサ!?」
「何か、真っ当な恋愛出来なさそうだし」
「!?!?」
「それに、実物見てると、ねえ?」
「ねぇって…」

今にも泣き出しそうなアッシュをよそに、名無しは空いたカップに紅茶を注いでいる。

「ごめんって。嘘だって」
「…ホントに?」
「本当本当」
「じゃあ、DOMやってくれる?」
「タダならやりたいかな」
「……………」

この後、名無しの携帯にDOMが勝手にダウンロードされていて、アッシュから315円を手渡されたのは言うまでもない。

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