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□【4】不良や酔っぱらいに絡まれてピンチのとき、突然現れて救ってくれる
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友達に連れられて、初めてクラブと言う所に来た。
その日はちょうど周年パーティーをやっていて、若干ナードな感じのイベントで初めて来た名無しにも居心地が良かった。
皆がしっかり音楽を聴きに来ている、という感じもいい。

友達が楽しそうに踊っているのを、名無しは少し離れた所にあるテーブルから見ていた。
飲み物を口に含んで音楽に浸ろうとすると、赤いTシャツを着た男が一人、絡んで来た。

「キミ可愛いね。一緒に踊ろうよ!」

名無しは、一発で「迷惑です」とわかる顔をしてみせるが、男は中々撤退しない。
友達の所へ行こうとするのを遮って話し掛けたり、やたら触ろうとしてくる。

さすがに気持ち悪く、気の弱い名無しの堪忍袋の緒が切れた。
勇気を振り絞って声を荒げる。

「触るのはやめて下さい」

「いいじゃん。少しくらい」

ニヤニヤ笑うだけで、赤Tシャツは全然止める気配がない。
必死の抵抗は虚しく散ってしまった。

名無しは耐えられず、とうとう外に出た。
ここのクラブは外が庭のようになっていて、座ってお酒を飲んだりする事が出来るのだ。
名無しが休んでいると、なんとまあ、そのクソナンパ野郎が外まで付いて来たではないか。

「ねえ?これじゃオレ、すっごくたちの悪いしつこい男みたいに見られるじゃん?」

「すみません。私、彼氏いるから困ります」

ここまで言ったら引き下がるだろうと思ったら、やはりこのクソ野郎、空気の読めなさがただ者ではなかった。

「じゃあ友だちになろうよ!友だちなら良いでしょ?」

「すみません!本当にもうこれ以上お話はできません!!」

「電話番号教えてよ!お願い!」

「嫌です!本当にごめんなさい!来ないで下さい!」

腕を握られ、名無しは逃げ出す事が出来ない。
振り払おうとするも男の腕力にかなう訳がなく、あっと言う間に両手を握られて拘束されてしまった。

この様子を見て、何かおかしいぞと周りが少しざわつき始めた。
感じ取った一人の大柄な男が、二人に近付く。

「おい。よしてやれ」

ピンク色が鮮やかなシャツを羽織った金髪の男が、クソ野郎の肩に手をかけた。

「この子は俺が先に見つけたんだ。邪魔すんな!ねえ、アドレスだけでも良いからさ」

「困ります!助けて下さい…!」
 
今にも泣き出しそうな名無しに懇願され、男は頭を掻いた。

「嬢ちゃん、ちょっと目ェ瞑ってろ」

「え?あ、はい」

ぎゅっと閉じられた事を確認して、クソ野郎を名無しから引き離し、瞬時にクソ野郎の頭に激拳を食らわせた。

赤Tシャツナンパ野郎は物凄い勢いで吹き飛び、観葉植物やら椅子やらを巻き込んで倒れている。
衝撃音を聞いて目を開け、そちらを見ようとする名無しを、男が手で制した。

「見ない方が良いぜ。ちょっとやりすぎた」

「あ、ありがとうございます」

「気にすんな。じゃあな」

テーブルに置いてあったビールを取り、背を向けた彼を呼び止めた。

「待って下さい!あなたは…」

「名乗る程のモンじゃねえよ」

金髪にピンクのシャツ。そしてこの喧嘩の強さ。名無しは、この男の噂をよく聞いていた。
誰もが恐れる、かの有名な男に違いないと確信した。

「あなたは、悪い奴のドタマに激拳をぶち込む、上海のなまはげ的な存在の人ですよね!?」

「あぁ!?」

男は思わずコケそうになったが、何とか踏ん張った。

「誰がなまはげだ!俺はシェン・ウーだ。覚えとけ」

「シェン・ウー…」

「間違えるんじゃねえぞ」

「はい!」

「しゃあねぇな。お前、危なっかしいから側にいてやるよ。行くぞ」

「やったー!」

仲良く室内に戻る二人を、一連の騒動をずっと見ていた人達はあたたかい目で見守っている。
ただ、ナンパ野郎だけは額から血を流しながら、気に食わないとでも言いたげな顔をしていた。
 
 

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