SNK

□たいとう
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家の中に居ても寒いこんな日は、冷えた体が芯から温まる物が食べたくなる。
冬と言えば、うどんではなかろうか。

「うどん食べたいね」
「そうだね。今日は寒いから」

名無しの提案に、楓は頷く。

「今日のご飯はうどんにしよっか。あ、でも家にうどんあったかな?探してくるね」
「うん。ありがとう」

名無しはコタツから這い出て冷蔵庫の中を確認しに行く。
あらゆる所を開けて探したが、やはりうどんは無く、楓の待つ居間へと戻った。

「うどん無かった?」
「うん。楓さ、移動技あったでしょ?」
「え!?」
「何だっけ?帯刀・歩月だっけ?」
「いや、それは…」
「うどんは1個30円くらいで売ってる奴ね。後はネギとかまぼこも宜しくね!」

にっこりと微笑んで、名無しは楓に千円札を渡した。
移動技の帯刀・歩月は、兄である御名方守矢の技であるのだが、覚醒していない弱気な楓には名無しに文句を言う事は出来ない。
そのまま買いに行くのか、「その技は僕には使えないんだよ」と優しく名無しに教えるか、悩む。

「楓?ほら、超高速で瞬間移動しちゃいなよ!大丈夫。私は引いたりしないから。視界から消えちゃっても良いよ!」
「あ……うん」

こんなに期待をしてくれている名無しに、とやかく言えそうにない。
だが、言わなかったら徒歩でスーパーまで行かなくてはならなくなる。
もう、覚醒するしかないのだろうか。

「やるしか無いのか…」
「楓!?」

名無しの目の前にいた楓は覚醒し、瞬く間に結んでいた髪が解け、金髪赤眼になった。

「俺を覚醒した…てめぇを呪いな…」
「ちょっと。何で覚醒してんの」
「名無し。落ち着いて聞けよ?」
「うん」
「帯刀・歩月は俺の技じゃない。兄の技だ!」
「あれ、そうだったの?」
「ああ。俺は移動技なんて持ってないんだ。ごめんな」
「……もしかして、それ言う為に覚醒した?」
「しょうがないだろ。覚醒前の俺は弱気なんだよ」
「……………」

何と便利な性格なのだと名無しは少し羨ましく思ったが、やはり覚醒していない普通の楓のままで、言いたい事が言えるようになると良いなとも思う。
移動技など使わずに、二人で仲良く手を繋いで買いに行ったうどんは、格別に美味しかった。
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