SNK

□想いよ伝われ!
1ページ/1ページ


最近、テコンドーの修行が楽しくて仕方がない。もともと努力するのは好きなのだが、とにかく修行の時間が楽しみで楽しみで。
それは何故かと言うと、父さんの弟子である名無しさんを好きになってしまったからだ。
彼女のひたむたきな姿も、謙虚で慎ましやかで僕に負けず劣らず努力家で社交的で可愛くて綺麗で笑顔が素敵で、もう大好きなんだ。

大好き、なのだが、想っているだけではこの気持ちは伝わらない。
しかも名無しさんは、僕の事を同門としか見ていないような気がするし、誰かを好きになった事などないので、具体的にどうすれば良いのかわからない。

ここは、女性経験豊富な兄貴に聞くしかないのではなかろうか。こう言う時には頼りになる。

「あ、兄貴!」
「ん?」
「ちょっと相談があるんだけど」
「珍しいな。女の事か?」

ずばりと言い当てられて戸惑うと、ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべながら肩を組んで来た。

「で?誰だよ?」
「え…あーっと、名無し、さんなんだけれど」
「名無しねえ!まあ、そんな事だろうと思ってたけど」
「え!?」
「わかり易いって事だよ」

そんなにバレバレだったのか。皆に知られているかもしれないと思うと赤面ものだ。
体を突いてくる兄貴を押さえて、溜息をついた。

「勿論、告白するんだろ?」
「そんな急に!?も、もう少し仲良くなってからの方が良くないかな」
「ちんたらしてたら取られるぞ。ほら、行くぞ!」
「兄貴!」

道場まで引っ張って行かれて扉を開けると、丁度父さんと名無しさんが練習している所だった。このままでは本当に告白する事になりそうだ。

「名無し。ジェイフンが話があるってよ」
「ジェイフンが?」
「ああ。ジェイフン、早く言えよ」
「あ、えっと…」

僕が兄貴に相談しようとしたのは、名無しさんとどうやって中を深めていくのかであって、いきなり告白しようと言う事では無かった筈だ。
いや、そんな事を考えいるバヤイでは無い。目の前で名無しさんが微笑んでいる。いつの間にやら、父さんと兄貴は気を利かせてくれたのか居なくなっていて二人きりだ。

告白しなければいけない。なんと言えば良いのだろう。格好いい言葉で名無しさんをときめかせたいが、今の僕には何も思い付かない。

「ジェイフン?」
「はっ!あ、あの、名無しさん!」
「はい」
「す、すすすす、き」
「ススキ?」
「いや、ススキでは無くて、あの、その……僕は名無しさんの事が、好きです」

言った。言ってしまった。顔が熱い。もう全身が熱い。
名無しさんは何とも言えないような表情で、この沈黙が痛い。

「私も、ジェイフンの事好き」

名無しさんが、はにかんで笑った。
一瞬、何を言われたのかわからなかった。理解した頃には手が震えて、心臓がうるさい位に鳴った。

「名無し、さん。好きって」
「ジェイフンが好きって意味だけど…」
「りょ、両想いですか」
「そう言う事になりますね」

それから暫く二人で照れながら、テコンドーの練習を始めた。
やっぱり楽しい。だけど、名無しさんへのこの想いが通じて、もっと楽しくなった。
明日も明後日も、幸せな毎日が続くに違いない。







おまけ

名無しさんとの甘い一時を噛み締めていると、スパンっと豪快に戸が開いた。

「ジェイフンおめでとう!」
「あ、兄貴!?何で居るの!?」
「いやー、あのジェイフンにもとうとう彼女が出来たか!お兄ちゃんは嬉しいぞ」
「見てたの!?」
「キスしちゃえ!キス!名無しもしたいだろ?」
「ええっ!?」
「キース!キース!キース!キース!」
「兄貴っ」
「そーれ!キース!キース!キース!」
「いい加減に鳳凰脚!」
「うぎゃあ!!」

 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ