SNK

□涼しげな君
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風が通って緑陰が涼しい。
こんな暑い日は、縁側で寝るに限る。
しかし名無しが寝転んでいるのは貴人の家であって、自分の家では無い。
貴人はまだ合気道の稽古があるからと言って、名無しを放って道場へ行ってしまった。
仕方が無いので30分ほど畳の香りに癒されながら、綺麗に手入れされた庭を見ていると、道着のままの貴人が帰って来た。

「お帰りなさい」
「ただいま。待たせてごめん」

名無しは起き上がって貴人を迎える。
彼は、冷えた麦茶が乗ったお盆を置いた。

「飲んで」
「うん。ありがとう」

グラスを受け取ると、名無しは少し口に含んで喉を潤す。
隣を見ると貴人も同じように麦茶を飲んでいた。
見れば見る程、女性と見紛うような端正な顔で道着がよく似合う。
稽古直後のせいか、紅潮した頬が何とも言えない。

「名無し、どうした?」
「あ、ごめんね。見とれちゃって」

その一言で、紅潮していた貴人の頬が更に紅く染まる。

「貴人の顔見てるとさ、涼しくなれる気がして」
「僕の事を何だと思ってるんだ…」
「涼しい顔してるからいけないんだよ」

貴人は赤くなった顔を片手で隠しながら、名無しの額を指で強く突いた。

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