SNK

□飽きるまで
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リビングで一人テレビを見ていると、いきなり玄関が開いた。
大体誰かは見当が付いていたので、部屋に静かに入ってくる男を、顔は動かさずに目だけで見やる。

「フリーマン」

フリーマンの服には、乾いた血がこびり付いていたが彼は気にしていない様子だ。

「また誰か殺してきたの?」
「…クク…皆死んだ…」

可笑しそうに笑いながら、彼は私の隣に座った。

「人殺しはあんまり良くないと思うよ」
「死を理解させてやったんだ」
「…ふーん」

彼に興味を抱かれてかなり経ったが、相変わらずフリーマンの言う事や行動は理解できない。
余りにも自分とかけ離れ過ぎている。
と言うか、今の私達の関係さえもわからない。
フリーマンは、行き先は知らないが日中はふらふらと出歩いているし、たまに私の家に来るが、気付いたら居なくなっている。
好きだと言われた事はないから、恋人同士でも無いと思う。
でも、私は彼が好きだ。狂人だが、良い所もある。

「ねえ、フリーマン。私って何なのかな」
「お前に興味がある」
「…返事になってないよ」

苦笑しながら、私は彼のしなやかな体に初めて抱きついた。
フリーマンの首筋に顔を埋めると、意外にも柔らかい赤色の髪の毛が掛かる。

「どうした、名無し…」
「フリーマン、好きだよ」

返事が無い代わりに、フリーマンの右腕が私の背中に回り、もう片方の手で頭を撫でられた。

「……殺されるかと思った」
「クク…召されたいのか?」
「あはは。まだまだフリーマンと一緒に居たいから、召されたくないかな」
「……中々可愛い事を言うな」

彼が余りにもらしく無い事を言うものだから、体中の熱が、自分の顔の方に上っていくような気がした。

「飽きたら、殺してね」
「綺麗に召してやろう」
「うん」

髪の間から見えた唇が近付いてきて、軽く私の唇に触れた。
やはり、彼らしくないような優しい口付けだった。
フリーマンに召される日が来るのか来ないのかは、まだ誰にも分からない。

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