SNK

□一緒に勉強
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目の前には古典の教科書とノート。右手にはシャーペン。向かいには貴人。
と言う、名無しにとって良いのか悪いのかよく分からない状況に置かれている。
一週間後に迫る、一学期の期末テストの為に今日は西園寺家で勉強会を開いているのだ。

「名無し、『見れ』の活用形の種類は?」
「マ行…マ行、上一段?」
「正解。次、『なほ、名告りし給へ』を現代語訳して」
「やはり、名前を言って下さい!」
「正解。良く出来ました」

貴人は、いつもの無愛想さからは考えられない程の笑顔を、名無しに向けた。

「良く頑張ったな」
「貴人のお陰だよ。ありがとう!」

名無しが苦手だった古典も、好きな人と一緒だと頑張って勉強出来る。
その上、貴人の得意科目は古典と来た。教え方も上手く、覚えられない訳がない。

「頑張ったからご褒美ちょうだい!」
「現金な子だな。はい、よしよし」

向かいに座っていた貴人は、身を乗り出して名無しの頭を優しく撫でた。

「…あれだけ頑張ったのにこれだけ?」

割に合わない、と名無しは不服そうな顔をする。

「じゃあ、これを全部現代語訳できたらもっとご褒美あげるよ」

貴人はそう言って、びっしりと文字が詰まっているプリントを名無しに差し出した。

「本当!?じゃあ、ご褒美はアイスでお願いします!」
「…え?」
「さあ、頑張るぞー!」

貴人は思った。
名無しが問題を解いたら「ご褒美だよ」とキスをして甘い雰囲気にしちゃおうとか思っていたとは絶対に言えない、と。

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