KOF

□意地悪
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いくら生活感の無いデュオロンにも、ちゃんと家があるもので。
何だか隠れ家みたいで、普通のお宅とはかなり違うのだが、そこは飛賊だからと言う事で許される。
名無しが初めて訪れた彼の家は、まあものの見事に生活感が無い。
テレビもタンスも無くて、どうやって暮らしているのだろうと考え込んでしまう程だ。

「名無し」
「ありがとう」

広い部屋の中に一つだけある四角い机に、お茶が入った湯飲みが置かれた。
デュオロンは名無しの横に腰を下ろし、微笑みかける。

「ゆっくりしてくれ」
「あ、うん。そうさせて貰います」

そうは言ってみたが、寛げそうにはない。
殺風景な部屋に無言が続いているので、変な音をさせないようにと呼吸をするのにも気を使ってしまう。
そしてその上、デュオロンが。

「デュオロン、近い」
「ん?」
「ち、近いよ」

彼の体が、名無しの体にピッタリと密着している。
近くにあるデュオロンの顔は、不覚にも女である自分より綺麗で、心臓が跳ねる。

「もうちょっと離れてくれないと。ねえ、デュオ…」

手で押して離そうとすると、肩を抱かれ引き寄せられた。
驚いて顔を上げてみれば、先程より更に近い位置にある、端正なそれ。
切れ長の赤い目に見つめられたら、もはや恥ずかしさで顔は上気して、名無しの頬は少女のように明るい。

「部屋に来ると言う事は、こういう事だろう?」
「ちがっ…」

左手で顎を支え、熱くなった頬にキスをした。
至る所に口付けながら、名無しを押し倒さんとばかりにのし掛かる。

「な…なに、してんの」
「名無し」
「ばか!」

デュオロンはにこりと笑みを浮かべ、名無しの唇を舐めた。
顔を赤くしながら、びくんと体を跳ねさせる名無しを見て、楽しむ。

「名無しからもキスをして欲しい」
「え!?」
「早く、名無し」

戸惑うが、急かされて名無しは覚悟を決めた。デュオロンの背中に手を回し、引き寄せる。
彼のほんのりと紅い唇に、数秒重ねた。

「それだけか?」
「そ、それだけって…?」
「いつも、俺がしてるやつをしないと許さない」
「……!!」
「名無し。ほら」
 
もっと深いキスをしないと離さないと言われ、名無しは渋々ながらも何度も繰り返す。
今夜は勿論泊まって行くよな、とデュオロンに聞かれ、私の身は持つのだろうかと不安になった名無しだった。

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