KOF

□馬鹿も風邪をひくらしい
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「あらら、バカは風邪引かないのに」
「誰がバカだ、誰が」
「ここにいる喧嘩馬鹿だよー」

遡ること何日前か。
名無しが風邪を引いた時に看病をしていたシェンは、どうやらその時に移されてしまっていたらしい。
いつもは酒を飲みながらへらへらと歩いている彼も、今は布団の中だ。

「シャツのボタン全開だからだよ」
「ちげぇ。お前が俺に移したんだ」
「はいはい。そうですね」

上海の武神と呼ばれるデンジャラスな彼も、名無しの手にかかれば飼い犬も同然。大人しく冷えピタを額に貼って寝ているシェンが、いつも人を殴っているような野蛮人には思えない。

「シェン、何か食べる?」
「おう」
「お粥で良い?」
「名無しが作るのか?」
「うん。あ、買い物行った方が良いかな…」

冷蔵庫を漁ろうかと名無しが立ち上がると、後ろからシェンに腕を引かれてベッドへと倒れ込んだ。

「ちょっとシェン、何すんの」
「行くなよ」
「え?材料あるの?」
「ねえけど、出てくなよ」

抱きしめられて、名無しはシェンの腕の中で動けなくなった。この馬鹿力にはどう足掻いてもかなう訳がなく、大人しく収まる事にした。

「お腹空いてないの?」
「空いたけど、名無しが居ない方が嫌だ」
「病気の時って人恋しくなるよね」
「俺はずっと名無しが恋しい」
「……熱出ると、らしくない事言うようになるのかな」
「そうかも知れねえ」

唇にキスすると移るから、と頬にキスをされて、より強くお互いを抱きしめた。
このままずっとシェンが風邪を引いていても良いかも知れない。
甘い言葉を沢山囁いてくれる彼は、今日みたいに弱っている時しか無いだろうから。

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