KOF

□軟派男とオープンカー
1ページ/1ページ


最近ぐずついていた天気も一転、今日はとても良い天気になっていた。
その上休日で、連日の雨で億劫になっていた外出も気兼ねなく出来る。

「よし、新しい服買いに行こう!」

久々の買い物に、いつもより少しお洒落をして家を出た。
玄関のドアを開けると、そこには一人の男性が立っている。

「……紅丸?」
「名無し、おはよう」

さらりとした金髪をかき上げながら、紅丸は微笑んだ。
名無しは驚くあまりしかめっ面をしながら、紅丸の姿を足の先から頭のてっぺんまでまじまじと見つめた。

「…何で居るの?」
「そりゃ、名無しに会いたかったからに決まってるだろ?」

歯が浮くような台詞も、朝に聞くと何故だか少し爽やかに思える。

「今日は彼氏とデート?」
「ううん、一人で買い物」
「なら良かった!俺とデートしよう」

名無しの返事を聞かずに、紅丸は強引に手をひいて赤いオープンカーまで連行した。
助手席のドアを開けて座るように促すが、彼女は二の足を踏む。

「ま、待ってよ!何でデート!?」
「大丈夫、退屈はさせないからさ」
「そう言う問題じゃない!」

有無を言わさず乗らされた車が走り出し、爽やかな風が頬を撫でる。

「…オープンカーって凄い」
「だろ?暑い日はこれに限るな」

余りの心地よさに、名無しはついつい紅丸に無理矢理連れて来られた事を忘れてしまう。
クリアな景色を楽しんでいるようだ。

「…で、今までに何人の女の子を助手席に乗せたの?」

名無しが意地悪そうに聞くと、紅丸は苦笑いをして答える。

「名無しが初めてだよ」
「嘘だ。何人もの可愛い女の子を手玉に取ってる癖に」
「本当だよ。好きな子しか乗せない」

真剣な表情をしているが、彼お得意の甘い嘘なのか本当なのか、名無しには判断がつかない。

「そ、それより紅丸。何で私を誘いに来たの?」
「言っただろ?名無しに会いたかったから。長い間アメリカに居たから、名無しが恋しくて」
「それ言うの、私で何人目?」
「………はぁ」

一つ溜め息を吐くと、紅丸は急に車を道の端に停めた。

「どうしたの、紅丸?」
「俺って、そんなに軟派に見える?」
「う、うん」

軟派に見えるのでは無く、本当に軟派そのものではないかと名無しは思う。
彼は優しく誠実でもあったが、女性関係については第一印象からそう思わせる人物だった。

「俺、一途だぜ?名無しが好きだ」
「え?い、いきなりそんな事言われても…」
「いつも言ってただろう?」
「言ってた、けど」

出会った当初から好きだ好きだと言われていたが、名無しはいつも冗談半分に聞いて、受け流すのが当たり前だった。

「俺の恋人になってくれ。幸せにする」

紅丸らしからぬ真剣な眼差しと声色に押されてしまう。

「……う、うん」
「よし!じゃあ、これから楽しいデートだ!よろしくな、可愛い彼女」

紅丸は名無しに微笑みかけ、車を走らせた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ