KOF

□看病
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「名無し、入るぞー」

玄関からシェンのデカい声と足音が聞こえる。
それを名無しは、布団の中で聞いていた。

「ったく、呼び出しやがって」
「ごめんね。でもどうせ暇でしょ?」
「…………」

どうやら図星だったらしく、黙って眉をひそめている。

「だからってなァ、コンビニまでパシらせんなよ」

シェンは手に持っていたビニール袋を机に置いて、名無しが寝ているベットの脇に座った。

朝、目を覚ましたら喉が痛くて、だがそれだけだったので風邪ではないだろうと掃除と洗濯をしていたら、段々体がだるくなってきた。
そこで熱を測ってみると、微熱を通り越していて、ベッドに入った次第である。
外に出れない程では無かったが、ここぞとばかりにシェンをこき使ってやろうと、買い物をして家に来るよう電話をしたのだ。

「私は風邪ひいて動けないんだから、優しくしてよ」
「バカ、誰が優しくするか」

歯を見せて意地悪く笑うシェンは、年齢より幼く思える。
精神年齢が低いだけだとは言ってはいけない。

「本当は心配なクセに」
「あ!?だ、だだ誰が心配なんかするかよ!お前なんか、お前なんかな…」

ぶつぶつと語尾を濁らせながらシェンはうつ向いた。
そんな彼を見て、名無しは笑いながら頭を撫でる。

「ば、ばか、撫でんなよ」
「だってシェンが可愛いから」

どうせならカッコ良いって言え、とかなんとか、シェンはまた、ぶつぶつと文句を言ったりしている。

「本当にありがとう。もう帰って良いよ?」
「…え?しょ、しょうがねぇから、看病してやるよ」
「いいの?」
「いいって言ってんだろ!」
「ありがと、シェン」
「お、おう。早く治せよ、名無し」

照れるシェンも見れた事だし、看病もして貰えるし、これならずっと風邪をひいたままでも良いかな、と名無しは思った。

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