KOF
□邪魔者は蹴散らして
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「……うわー…」
バーンシュタインの豪邸を前にして、名無しの口からはそんな言葉しか漏れなかった。
「うわー…」
「さっきからそればっかりだな」
アーデルハイドは隣で苦笑しつつも彼女を可愛く思いながら、ロココ調のドアを開く。
「こんな豪邸テレビでしか見た事無いよ」
「まあ、早く上がりなさい」
促されて中に入ると、初めて見る総大理石の床、眩しい限りのシャンデリア、高級感溢れる壺が目に入る。
きょろきょろと辺りを見回す名無しの手をひき、アーデルハイドは自室へと案内した。
広い部屋に、シックかつゴージャスな家具がスッキリと配置されていて、ゴチャついていない、何を取っても気品の溢れる、いかにもアーデルハイドらしい部屋となっている。
「…これが本物の貴族の気品なの?」
「貴族なんかじゃない。名無し。ほら、おいで」
そう言いながら、自身が座っているソファの隣を軽く叩いた。
「そう言えば、今日はローズちゃん居ないの?」
「ああ、出掛けている」
「そうなんだ」
アーデルハイドは隣に座った名無しの手を握り、意地悪く微笑んでみせる。
「邪魔されたく無かったからな」
「もしかしてアデル、わざと出掛けさせたの?」
「そう言う事になるかな。俺は仕事があるからって嘘をついて、ローズが出掛けるようにフランスの良いレストランを予約してあげたんだ」
非常にブラコンな妹のローズは、デート中であろうと何であろうと、構わずアーデルハイドにくっついている。
二人にとっては迷惑極まりない存在で、この子がどこにでも現れる限りゆっくりしてはいられないのだ。
「アデルって結構意地悪」
「名無しと二人切りになりたかったんだ」
そう言って名無しの体を引き寄せると、長く唇を重ねた。
「…アデル…」
「今日は二人切りでゆっくりしような」
名無しの頭を撫でながら、アーデルハイドはまた口付けた。
二人切りの時間は、ローズが帰宅するまでまだまだ続く。