KOF2

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バレンタインデーと言えばチョコレートを渡すのが当たり前だが、ホワイトデーは何を渡せば正解なのだろうか。
クッキーか、飴玉か。どこのスーパーへ行っても特集コーナーが組まれていているが、そこで買うだけと言うのは何だか味気ない。
自分で考えたものをプレゼントした方が名無しは喜んでくれるだろうし、嬉しそうな顔を見れるのなら本望だ。

「……と言う訳なんだけどよ、何か良いもん知らねえか?」
「自分で考えるって決めたのに、なんでボクに聞くのサ」

小さな脳で5日ほど悩み続けたシェンは、全く何も思い浮かばなかったので、喫茶店にアッシュを呼び出して緊急会議を開いた。

「お前、こう言うの得意そうだろ?」
「…どうしようかなー」
「頼む!上海ガニでもザリガニでも奢ってやるから!」
「仕方ないなア。やっぱりさ、貰って嬉しいのは使えるものじゃない?」
「………使えるもの……」
「例えばサ、服とか。付き合ってるなら相手の好みの服装とかわかるでショ?」
「好みの…好きな…成る程、わかった!ありがとな、アッシュ!」

シェンはガタンと椅子を倒して勢い良く立ち上がると、自分が飲み食いした代金も払わずに喫茶店を飛び出した。

「ちょっとシェン!お金はー!?」

この金も、お礼の上海ガニもうやむやになるんだろうなと、一人残されたアッシュは深く息を吐いた。

貰って嬉しい、使えるもの、服、名無しの好み。

「そう考えると、必然的にこうなる訳だよな」

アッシュから提案された通りのプレゼントを買い終えたシェンは、笑顔で名無し宅に帰った。

「ただいま!帰ったぞ、名無し!」
「おかえりー」
「なあ、良いもん欲しいか?欲しいよな?」

「シェンがそう言う時はロクなもんじゃないから、いらない」
「ばっ…!俺がこんなに悩んで買ったのに、いらないって言うのか!?」
「じゃあ欲しい」

渡された包みを開けると、名無しは表情を強ばらせた。
中には見慣れた、鮮やかなピンク色の生地が視覚を刺激する。

「…な」
「嬉しくて言葉も出ねえのか!?」
「こ、こ……」
「ん?」

口をぱくぱくと開け閉めするが、かすかな声しか出ない。
 
「名無し、落ち着け!俺もプレゼントも逃げたりしねえからよ!」

名無しを落ち着かせる為に、シェンはにっこりと微笑んだ。
その様子を見て、名無しはようやく自分の思いを口にした。

「…………これ、シェンの服…」
「おう!ペアルックだ!」
「……なんでこれにしたの」
「プレゼントは自分で考えた方が良いと思ったんだけどよ、何にも浮かばなかったんだ。それでアッシュに相談したら、これが良いって!」
「……アッシュは、これにしろって言ってたの?」
「ん?…いや、貰って嬉しいのは、服とかの使えるものだー…って。だからさ、名無しの好きなものは俺だろ?で、服だろ?だったらこれじゃねえか!」

シェン・ウー曰わく、名無しの大好きな「俺」と、貰って嬉しい「服」を掛け合わせた答えは、このシェン・ウーご愛用のピンクの服になるらしい。
どうして、何を考えたらそうなるのか。名無しはシェンの気持ちになってみただけで頭が痛くなってきた。

「名無し!勿論、俺みたいに前のボタン全開で着なきゃダメだぞ!」
「……私がボタン開けたら見えちゃうでしょうが」
「安心しろ。家の中だけで良いから」
「あんた本当にバカだね」
「頼む!一回だけでも!」
「嫌です。その前にこんな服、絶対に着ない」
「な、俺がせっかく買ったプレゼントを着ないだと!?」
「黙れ変態」

後日、名無しはゴミ箱にシャツを捨てたが、ゴミに埋もれているそれを見つけたシェンが引っ張り出し、シャツはまた名無しの元へと舞い戻った。

いつの日か、ペアルックも夢じゃない…かも知れない。
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