KOF2

□お料理地獄
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激しく切られた野菜は、全く形が揃っていなかった。

「これが男の料理だ!」

そう言って、豪快にフライパンを振るシェン。
中身は飛び出して、コンロの上に数多く散っている。
何を思ったのか、シェンは珍しく「俺が飯を作る」と言い出して聞かなかった。
男が料理を作るとロクな事が無いのだが、頑固なシェンは言い出したら聞かないので名無しは承諾せざるを得なかった。

「材料が勿体無いんだけど」
「気にしたら負けだ。ほら、そのレタスを千切って入れてくれ」
「………はいはい」

フライパンに千切っては入れ千切っては入れの繰り返し作業に飽きた名無しは、そのレタスを自分の口に入れ始めた。

「春レタスは美味いわ」
「おい!つまみ食いすんなよ!」
「美味しいよ。シェンも食べてみ」
「俺を共犯者にすんな!な、むぐ」
「良いね。素材の味そのもの」
「飯が食えなくなるだろ!もう良い。お前は座ってろ」

何処かへ行けと背中を押しやられたので、名無しは大人しくキッチンの椅子に座り、男の料理を続けるシェンの後ろ姿を見つめた。
中々、様になっているのだが、彼は先程から何やら一人でぶつぶつと呟いている。

「ちっ。焦げついてんな…まあ何とかなるだろ」
「………」
「やべっ!おいどうなってんだよ!醤油の蓋が外れやがったぞ!!」
「……シェン」
「ま、味が薄いよりはマシだろ」
「…私、絶対食べないから」

青ざめた顔をして、名無しは席を立った。
そんな独り言を言われても喜んで食べる奴は居ないだろう。

「はあ!?さては名無し、お前、つまみ食いで腹いっぱいになったんだろ!」
「はいはいそうですね」
「全部食わなきゃ許さねえからな」
「うっさい!食べないって言ったら食べない!」


勿論、そんな事が許される訳がなく、名無しは泣きながら料理を食べた。
後日、腹を壊したのは言うまでもない。
 

 

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