KOF2

□たまには
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「ねえ、行かないでよ」
「あ?」
「今日は一緒に居たい」

ピンクのシャツを羽織って、ズボンのポケットに財布をねじ込み、背を向けるシェンの腕を掴んで甘い声でねだってみた。
喧嘩をしに行くのか誰かと会うのかわからないが、上海の街に繰り出すのだろう。
そんな彼の後ろ姿を見て、はいはいと手を振りながら笑顔で送り出すのはもう飽きた。

「昨日も出掛けてた」
「すまん」
「一緒にいれない?」
「…」

色仕掛けも通じないらしい。
目を合わせずに黙り込むシェンを見て、ああもっと猫なで声を練習するべきだったなと反省した。

「わがまま言ってごめん。いってらっしゃい」
「行けるかよ」
「?」
「一緒に居る」
「え」
「ほら。どっか行くか?」
「ううん。家で良い」

ありがとうと呟くと、シェンは髪を撫でてくれた。
手が触れた場所を確かめながら、シェンの膝に頭を乗せる。
見上げたら彼は笑っていて、幸せを噛み締めながら目を閉じた。

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