KOF2

□だって君が
1ページ/1ページ

彼は猛毒。
血液型は毒らしいし、その毒はどんな薬も効かなくて、死を待つが一番の薬だと聞いた。一発でも食らったら死亡確定。
傷に毒を染み込ませて、時間をかけて馴染ませるという飛賊秘伝の修行を重ねた、とんでも人間を好きになった私はバカなのだろうかと名無しは思った。

「ねえ、麟」
「何だ」
「私もさ、普通の恋人達みたいに手繋いだりしたいなー、なんてね。嘘だよ」

何を言っても無駄だと、名無しが一番よくわかっている。だから直ぐに訂正する。
わかってはいるのだが、たまにこういう事を言いたくなる。
好きな人に触れたいと思うのは、至極当然な事なのだから。

それに、ただ、麟がどれだけ自分に愛を感じているのか知りたいだけでもある。
普段から甘い言葉を言ってくれる訳でもなし、構ってくれるでもなし。
恋人らしい事をした記憶も無い。
仕方無く、せめてもと麟の肩に頭を乗せた。

「俺と居るのを止めたらどうだ」
「そんなこと、出来る訳無いでしょ」
「………恋人らしい事がしたいなら」
「麟じゃなきゃ嫌だって言ってる。いい加減わかってくれないかな」
「そんな事は」

わからない、と言葉を続けようとしたところでぴしゃりと断ち切られた。

「黙って」

ゆっくりと麟の頬へ手を乗せて指先を這わし、口元を覆う布に手をかけた。

「もう、何でも良いや」
「何をする気だ」
「キス」

勿論許される訳がなく、麟は抵抗する。
毒霧が吐ける。キスなんてしたら只で済まない事は、名無しも承知のはずだった。

「死にたいのか」
「麟になら」
「馬鹿げている」
「好きな人とキスして死ねるなんて、王子様のキスで目覚めるよりロマンチックだと思うんだけど」

それでも触れたいと思うのは、やはり彼が好きだからか。

「殺されても大丈夫」
「お前を殺すなんて」
「麟が大好きだから」

君がそんな目で言うから、唇を奪ってしまおうかと思った。



(でもやはり、愛する人には生きてずっと傍にいて欲しい)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ