ブラッドの不思議な迷宮

□第一章
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突然だけど、僕ら竜族は絶滅の危機に直面している。

竜族の強さはあくまで空からの攻撃にあるのだ。
だから巣(洞窟)に攻め込まれると飛べなくてうまく戦えない。
時々人間の冒険者に殺されたりするのはこれが原因らしい。

つまり、近づかれると弱い。

あと、昔の戦争で開発された様々な竜殺しの神器・魔器、そして魔法。その一部が未だこの世に現存して僕らを苦しめている。

これもまあ近づかなければ大丈夫、多分。


・・・で、


「僕は主張します!全ては巣を洞窟状に造っちゃう今までのやり方が悪いのだ、と。」


正面に長老達。ただ真っすぐこちらを見つめてる。見た目は他の若い大人達と変わらないのになんか怖い。

「巣は高く、広く、塔状にして侵入者を空からやっつけるべきです!」

隣にはクローネ。友達の一人。若いけど成竜。

「そこで僕はこちらのリュベルクローネと巣作りの実験をしたいと思います」

そして僕、ブラッド。
現在12歳。

「どうか最上の塔の使用許可を。」


というか外出許可を。

この年齢だと村から出るのも一苦労。
保護者必要だし。


ところでクローネ、協力してくれる理由が村にいても(雌に)虐められるからってのはどうだろう?


    第一章

 『飛ばない竜は
   ただのトカゲ』



≪最上の塔≫

深い森の中、そびえるそれの頂上に降り立つ。
この塔はかつて竜族が神族や魔族と戦争していた頃の名残らしい。
当時、一部の人間達が竜族の側について戦ってくれたことに感謝して建てられたというこの塔は、現在まで冒険者達のための習練場として活躍している。
簡単に説明すると、登ってきた挑戦者を死なない程度に叩きのめす為の塔である。

周辺には飛行魔法を阻害する結界が張り巡らされていてショートカットは不可能。少なくとも人間には。

ちなみに竜族の雄が交代で番人をしている。

「うん、では目標の再確認をしようか」

隣に降りた黄金の竜・クローネはそう切り出した。どこと無く上機嫌なきがする。
そんなに村を離れるのが嬉しいかな

・・・嬉しいよね。
雌怖いし。

「私達の目的は三つ。一つ目はこの塔を巣に見立てて挑戦者を迎撃すること」

向こう100年位はクローネ
(と僕)が番人になりました。
ちなみにこの塔、床と柱ばかりで壁はほとんど無い。よってどの階からも飛び立てる。

あれ?同族や翼をもつ種族ならどの階からも攻め込めるのかな、逆に。

「二つ目は任務と称して配下を集め、巣作りに備えること」

これが本命。配下ごと何処かに引っ越せばそれで巣作り完了である。
ただし配下の魔物や監視器具は自力で集めることになった。
これは長老達からの依頼。普通の巣作りでは魔族の会社
『ギュンギュスカー商会』から魔物とか購入するんだけどね。
その魔物である程度侵入者を撃退するのだ。
でもどうやら魔族に依存しすぎてるのが問題視されてるみたい。

「三つ目として稼ぐだけ稼いで姿をくらませること」

・・・竜族の雄がやけに少ない理由がこれである。
いわゆる暗黙の了解。

「とりあえず私が生活物資の搬入をしよう」

じゃあ僕は最上階付近だけでも掃除しておこう。
その次は周辺の魔物をスカウトだ。
とにかく信頼できる配下を集めよう。



こうして二頭の竜がクインズベル王国・最上の塔に住み着いたのだった。
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