casual dream
□first love -15-
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先輩のいない毎日が過ぎる。
授業を受けて、お昼を食べてまた授業、そして部活。
ドキドキもない。
「あれが幸宏先輩の彼女?」なんて野次馬されることもない。
先輩と付き合う前の、ごく普通の高校生活。
ただ首元が寂しいだけ。
いつも身につけていたリングは今は机の引き出しの中。
先輩がくれた紺色のケースで眠っている。
・・・もう二度と開けることもないだろうな。
『水城はバレンタインどうするの?』
放課後、志穂ちゃんと久美ちゃん、そして、部活をさぼりたいオーラいっぱいの狩野くんとだべっていた。
質問の主は志穂ちゃん。
「バレンタインねぇ・・・」
まだ誰にも話してなかった、幸宏先輩のこと。
『先輩、チョコ好きだもんね。水城、プレッシャーなんじゃない?』
『手作り?プレゼント、なににしたの?前、どうしよう〜って言ってたじゃない』
『テツくんに手作り渡そうと思ってるんだけどさ、これ、味見してよ♪』
『え?志穂、これ、作ったの?すごーい!』
『うまそうだな。俺にもくれよ』
『狩野くん、味見はいいけど、当日はだーめ』
『なんでだよ』
『狩野くんはくれる女の子、たくさんいるもん』
『ちぇっ』
本当だったら私も笑いながらみんなに相談していたのかな。
泣きそうになって、きゅっと唇を噛み締めた。
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