虚像の騎士
□夜のバルコニー
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ルーキシスは四人目と踊っていた
曲が終わるたび、目の前にまた女性が現れるのだ
うんざりしていた
ようやく4曲目が終わったところで、ついにルーキシスは我慢の限界がきた
次にやってきた女性をなんとか断り、近くにあったバルコニーに出た
運良く誰一人おらず、ひんやりした夜の空気がルーキシスを包む
今までいたホールとはまるで別世界だ
途中給仕からもらったシャンパンを片手に、ルーキシスはゆっくりと外を眺めた
薄く音楽が聞こえているが、嘘のような静けさだった
「お疲れですか?」
急に誰かに話しかけられ、驚いて振り向いた
自分以外にこの静かなバルコニーに立つ者がいるなんて、全く気付かなかった
そこには、美しい黒髪のクラウス王子がにこやかに立っていた
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