虚像の騎士

□第一章‡宴と王子    馬車
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ガタゴト、ガタゴト 


綺麗に整備された道を、一台の馬車が進んでいる 

それは大きくきらびやかな造りで、一般庶民はおろか豪華絢爛な生活を営む貴族でさえ目にすることが難しいほどの物であった 


その中には、馬車にまけないほど豪華に着飾った人間が三人 


その内の一人、貴族の嫡子のような立派な服をきた若者が退屈そうな顔で窓の外を見つめていた 


目に入る景色は、先刻からたいして変化がないただの街並みだったが、行き交う人々の活気に満ちた様子を見て顔には出さなかったが少し楽しんでいた 



「ルーキシス」


ふと自分の名前が呼ばれたので若者は視線を窓から自分の正面に座る金髪の女性に移した 


「ルーキシス、あなたは仮にも我が国の第一王子。 
賤しい子供のようにキョロキョロと眺めるのはお止めなさい」 



厳しい口調でそう告げたその女性は、もう40近くになっているはずなのだがそうは見えないほど若く見える 
そして威圧的だ 


「はい、申し訳ございません。母上」 



ルーキシスは抑揚のない声で言った

もうずっとこの馬車に乗っているため、暇で仕方ないのだ 


王子としての立場上、気品のある身振りをしなければならないのだがルーキシスにはそれが苦手だった

じっとして動かずにいることなど耐えられなかった


だが、王子として厳しく躾られてきたせいかそのような雰囲気は微塵も見せなかった 

ルーキシスはあきらめて退屈な馬車の中を見つめた



もう城下町なのだから到着はすぐだろう


小さな希望を胸に
ルーキシスは目を閉じた




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