神への祈り
□‡第五話‡
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「魔法……?」
信じたくはなかった。
よく見る手品の類であって欲しかった。
だけど。
先程の痛みが、手にこびり付く黒ずんだ血が、僕の脳ミソに訴えかける。
それが真実だと叫ぶ。
悪魔。
目の前に座る紅の少女は悪魔。
魔法で僕の頬を切り裂いた悪魔。
白フードに殺されそうになった悪魔。
僕と一緒に逃げた悪魔。
…………悪魔?
悪い魔もの?
先程見せた異常なまでの走力や跳躍力。
これだけでも普通の人間じゃないことはわかる。
そして魔法。
彼女が不思議な存在であることを否定することはできない。
本当に悪魔なのかもしれない。
だけど、でも、
朱衣は悪い奴だとは思えない。
会ったばかりで何も知らないけど。
もしかしたら、悪魔っていってもいい悪魔なのかも。いやまてよ、悪っていう時点で悪い奴だろう。
でも朱衣は悪い奴には見えないし。
……あーもうっ!
わかんないっ!
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