神への祈り

□‡第四話‡
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話せと促す朱衣
でも、怖かった
上手く話せるかな、とか
信じてもらえるかな、とか
でも、朱衣ならわかってくれる気がした

何故か僕は会ったばかりの不思議な少女を信じることができた


気がつくと勝手に口が動いていた
「うまく話せるか分からないよ…?」

朱衣が頷くのがわかった 
そして僕はゆっくりと深呼吸をし、口を開いた 



「僕は佐々木と遊んでいて急にサッカーボールが――――」

全部を話した 


サッカーボールが飛んで来たこと 
目を閉じたらおでこに当たったこと
目を開けると知らない街にいたこと 
そこで白フードに出会ったこと 
黄金に光るボーガンを持っていたこと 
そのボーガンが朱衣を狙っていたこと 
叫んだけど気付いてもらえなかったこと 
いつのまにかもとの場所に戻っていたこと 
サッカーボールがまた当たったこと 


「それから…」


帰りに街のことを考えていて行き止まりにたどり着いたこと 
振り返ったら街に来ていたこと 
そして朱衣に出会ったこと 

「その後…」


走っている時にまた景色が歪んだこと 
別の場所にいたこと 
白フード達がいたこと 
白フードに気付かれなかったこと 
身体が擦り抜けたこと 
また戻ってきたこと



話し終えた 
思いだせる限りの全てを話した 


一息ついて朱衣を見ると、ぶつぶつと何かを呟きながら考えていた 

僕の話が信じられないのかな? 


ちょっと不安になりながらも、朱衣やこの街の事を少しでも知りたくて朱衣をまじまじと見つめた 

考えてみると、走るのに必死で朱衣をちゃんと見ていなかった 


改めて見ると、朱衣は本当に不思議な少女だった
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