神への祈り
□‡第三話‡
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海斗はT地路から戻って来た
目の前には紅の髪が風になびいている
「戻って…来た…?」
海斗は安心してほっと息を吐いた
振り返るとすぐ後ろに弱い紅の光があった
T地路へ行く前と同じ所だった
「まただ…」
最初の時と同じように夢での時間は僕が感じるよりも短いようだ
恐らく一瞬なのだろう
だから佐々木やこの少女は僕が夢を見ていたことに気付かなかったんだ
そう一人で納得している内に紅の光は遠く小さくなっていった
僕らはそれほど遠く走っているようだ
それなのに全く疲れを感じない
これも少女の力のような気がした
少女の不思議な力について知りたいと思った
紅の光や白フード達のことも聞きたかった
とりあえず話しかけようと少女の顔を覗いてみた
思わず息を飲んだ
健康そうな色をしていた少女の顔は蒼白くなり、金色の瞳は先刻のような光を失っていた
何も言えなくなってしまった
ただ繋いだ右手をぎゅっと握りしめた
いきなり少女が口を開いた
「なんだ!? 人の顔をじろじろ見て!!」
僕に向かって怒鳴ってきた
だが先程のような力強さは欠片もなかった