白黒羽扇
□季節の諸司馬
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※ホワイトデー話なのに、ブラックな下ネタですみません。
(無駄に長文1ページです。)
普段は呼びもしないのに勝手に来るくせに、
よりによってこの日に、この私を呼び出すとは。
(貴様と違って忙しいのだ!それも分からぬのか、凡愚めが!)
山ほど文句を撒き散らしながらも、
奴のいる蜀まで来てしまった。
(さて、奴の部屋は…と。)
今まで1〜2回程度しか訪れたことはない(それも、変態白軍師による強制連行)が、
大体の部屋の位置は記憶しているつもりだった。
そのような記憶力には自信があるはずだったが…。
(な、何…!私としたことが、迷っただと?いや、そんなはずは…)
記憶と合致するはずの諸葛亮の部屋は、もぬけの殻になっていた。
部屋を間違えたとも思えぬし…。
今思い出しても腹の立つ招待状、というより呼び出し状には、部屋への道順等といった情報は特になかったはず。
ならば、諸葛亮は私がこの部屋に来ることを予想して、何かヒントを残しているかもしれない…。
極秘で訪問(というよりほとんど侵入)している以上、気軽に通りすがりの者に尋ねる訳にもいかず、
私は、思い切ってその部屋に入った。
一見、何の変哲もない部屋だったが、私は肝心なことを忘れていた。
諸葛亮は、自ら策を仕掛けるだけでなく、妙な発明もすることを…。
気付いた時には遅かった。
一歩、踏み出した先の床の感触がないと思った瞬間、
落とし穴にまんまと吸い込まれてしまった。
全く、どこをどのように廻ってきたのか、方角が定まらない。
掴まろうとしても踏ん張ろうとしても叶わない、狭くて暗いツルツルの床を、
あちこちカクカク曲がりながら延々と転がされたと思ったら、
急に何かに吹き飛ばされた。
慌てて手足をじたばたさせたが、やはり何も掴めないまま、
やがて来るであろう衝撃を思って身をかたくした。
…ところが。
この身が打ち付けられるべき「硬い床」は、抵抗もなくサッと開き、
何もない空間に無防備なまま放り出されてしまった。
(あぁ…凡愚なのは…私の方だったか…諸葛亮の下らない罠に掛かって、一生を終えることになろうとは)
ぽすん。
「いらっしゃいませ」
これまた予想外の、落下する私をふんわりと受け止める着地点と、
穏やかに迎える声。
…いや、この声は…。
「きき貴様…っ!!諸葛亮!!!」
「司馬懿殿。お待ち申し上げておりました。来て下さらないのかと少々心配しておりましたが…」
「貴様という奴は…!どこまでも礼を知らぬ凡愚が!!客に対して背を向けたままとは…!!」
いや、本当は…恋人である諸葛亮から会いたいと言う旨の書簡を受け取って、嬉しくなかったはずなどない。
ただ、こちらへおいで下さいと、言葉遣いは丁寧だったものの呼びつけられたことが少々腹立たしかったのだが、
やはり恋人と会いたいという気持ちはお互い様だ。
たまにはよかろうと、文句を言いながらも遠路はるばる来てやったというのに。
到着早々、この仕打ちはないだろう。
「私が苦労して作り上げたカラクリ通路は如何でしたか?」
「如何も何も、体のあちらこちらをぶつけて、最後には宙に放り出されるわで生きた心地がしなかったわ、馬鹿めが!」
「やはり…そうでしたか…。しかし、私の計算通りです」
「何の計算だ」
「とりあえず、貴方は大した怪我もなくここへ辿り着き、ちょうど、計算通り私の寝台へ着地なさいました」
「寝台…」
そこで初めて、自分をふんわりと受け止めたのが、寝台だったことに気付いた。
しかもこれは、諸葛亮が使っているという。
途端に身の危険を感じて、這い降りようとしたが、体が思うように動かなかった。
先程腕やら腰等を色々ぶつけたり、慣れない体験による緊張が解けたばかりということもあって、一時的に体が言うことをきかなくなっているらしい。
「そして、すぐには体が動かないでしょう?」
これも、計算通りだったらしい。
「ま、待て…!私に、何を…」
「司馬懿殿、怖がることはありませんよ。愛する貴方に危害を加えようと思っている訳ではありません」
「では…なぜ…このようなことを」
「私はただ…」
そこで、背を向けていた諸葛亮が、ようやく私の方を向いた。
「貴方に、贈り物を。ほら、一月前に貴方が下さった贈り物へのお返しです」
今までも、胸くそ悪いと思いながらも認めざるを得なかった、諸葛亮の、人を虜にする笑顔。
一瞬、心臓が跳ね上がったのだが…。
「貴様、何の真似だ…」
その、むき出しになった「贈り物」には、しっかりと赤い紐まで丁寧に結われていて。
悪夢としか、思えない。これでは、どう見ても変態ではないのか。
自分では気付いていないのだろうか…。
「さぁ、受け取って下さい司馬懿殿」
「…受け取るも何も、紐の向きが逆ではないか。前後も逆なら、上下も逆さになっているようだが?
従って、そのようないい加減なものは贈り物と認識できぬな」
くだらん。
怒りをはじめとする様々な感情は抑え込み、冷静を装って返してみた。
しかし、相手は腐っても軍師。へ理屈をさらにたたみ掛けてきた。
「あ、すみません。まだ準備が整っていませんでした。ですが、貴方が来て下さったのです。もうすぐ完成形になりますので」
「完成形だと…貴様、何を……んっ」
「………」
「は……ふ…んっ…」
「仲達……っ、可愛…い…です……」
「……っ。いきなり、く、くちっ、口付けるな!そのような格好で!!」
「すみません。ですが、見て下さい。貴方への贈り物が、貴方との愛の力を借りて完成形になりました。これで赤い紐は前後逆でも上下逆でもありませんよ」
むくり。
「ぎゃあああああ!余計にいかがわしいわ、馬鹿めが!!」
「さぁ、私の愛のミルク付きチュ●スを受け取って下さい。受け取るといっても、手や唇等ではなくて、貴方の中の定位置に…」
「ち、近寄るな!変態が!!」
「でも、まだ動けないでしょう?」
「や、やめっ……!!!」
☆Happy White Day☆
しかし、この二人に限っては、
どちらのためのホワイトデーなのか…。
「でも、私も司馬懿殿も満足できたので、よしとしましょう。ふふふ」
「勝手に、コメント、するな、馬鹿、め、が……っ」
*****
相変わらず、時代背景も何もかも無視しまくりの諸司馬でした。
まぁ、アレにリボンなんてありがちすぎるネタですが、
いつものシモ諸司馬ベースで、さらにシモくアレンジしてみました。(せんでよいわ!馬鹿めが)
では、長々と読んで下さってありがとうございました。