銀と金のマテリア【短編集】
□★裏舞台
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「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
「どうした?もう終わりか?」
「………るさい。黙れ」
ここは、とある世界のコロシアム。
前にいるのはセフィロス。顔を合わせるのは久し振りだ。
もちろん、古い知り合いとの感動の再会などではない。
俺は、大空洞での戦いの後も気配が消えないセフィロスを、ずっと探していた。
今度こそ決着を付けるために。
そして、対峙することが叶った今、俺は負けるわけにはいかない。負けられないのだが……。
余裕のあるセフィロスに比べて、俺のこの様は何だ?
セフィロスを探す旅の間も、剣技の練習や体力作りを怠ったことはないのに。
しかし、腐ってもかつて英雄と呼ばれていた男とは、基礎体力も筋力も持久力も差がありすぎた。
戦闘が長引けば長引く程、その差が目立ってくることに愕然とする。
少し鍛えた程度で満足していた俺が甘かったのか?
それとも、セフィロスがさらに強くなったのか…?
ほんの一瞬の隙を、セフィロスは見逃さなかった。
キ─────ン!!
「うあっ!?」
それが大剣の吹っ飛んだ音だということに、自分の手の平の感触がなくなったことで初めて気付く。
しまった、と思った時にはすでに遅く、スローモーションのように視界が傾いていく。
生温い液体が俺を中心にじわっと広がるのを感じながら、意識が薄れていった。
目を開けると、一番に白い天井が目に飛び込んできた。
ここは…病院?
とにかく、誰か呼んで話を聞こうと周りを見渡してみたが、なんだか様子が違う。
…いや病院じゃない。それなら、ここは一体…?
と、同時にもう一つの事にも気付く。
俺、傷は?たしかに、セフィロスにバッサリ斬られたはずなんだけど。
ゾクッとした。ニブルヘイムでの記憶がよみがえる。
…なんとなく嫌な予感がする。とにかくこの場所から出なければ面倒な事になりそうな…。
また変な実験の材料にされたりして、これ以上おかしくなるのはゴメンだ。
慌ててベッドから降りようとした時、突然後ろから抱きすくめられて
動きを封じられてしまった。
「どこへ行く?」
「セ、セフィロス!?放せっ!一体、これは何のつもりだ!」
「お前をもう離しはしない。今まで寂しい思いをさせてすまなかったな」
「冗談じゃない。アンタといたら、命がいくつあっても足りないよ」
「つれないな」
「もしかして…アンタが俺の傷を治したのか?」
「そうだが?」
「なぜ?」
「治したかったから」
「俺をからかっているのか!!」
「ならば、どう言えばよいのだ?」
困惑の表情を浮かべる様子が以前のセフィロスを思い出させて、ふと懐かしい気分になる。
…いやいや、この人はもう、あの頃のセフィロスではない。
俺を平気で瀕死にしたり回復したりする人だ。騙されてはいけない。
「それなら、なぜ思い切り斬った?」
「お前が抵抗すると思ったからな。意識がない方が運びやすい」
「うるさい!この変態!!とにかく、もう一度勝負だ!!」
「クラウド、まだそんなことを言っているのか。もうロケは終わった。演技はしなくていい」
「は…?ロケ?演技??」
「そうだ。もうオレたちの出番は終わったんだ。だから…」
「ちょ、ちょっと待て!!一体何の話…!?」
「何を待つことがある?」
言いながら少しずつ体重をかけてくるセフィロス。
あぁ…美しい笑顔が怖いんだけど…そのまま見つめられると何もできない。力が入ってくれない。
「ちょっ、待っ…て!あぁっ…!!!」
「オレもお前をずっと探していた…クラウド」
…俺は再びベッドに沈み込んだ…。
=end=
▼あとがき▼
急に思いついた小ネタです。
そんなにギャグではないかも…;
大事な対決シーンのはずなのに、ただのバカップルにしてしまいました;
でもこの二人には、どんなシチュエーションであってもラブラブでいてもらいたいものですv(腐)