銀と金のマテリア【短編集】


□虹の向こうに (C side)
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あなたがいてくれるだけで、
こんなにも心が安らぐなんて……





…初めてあなたを見た時、心臓が壊れそうなほどで、それを周りに気づかれまいとするのに必死だった。

次に心が大きく揺れたのは、あなたと会った時。
今までは遠くから一方的に見ていただけだったのに、今度はあなたもこちらを見ている。
あんなに夢見てたというのに、あなたの不思議な色した瞳をまっすぐ見ることができなかった。
ただただ、緊張して。立っているのがやっとだった。
別に、その時二人きりでいたわけじゃなかったのに。

もう一度、会わないか?次は、二人で。


そう言われて、どんな気持ちになっただろう?自分のことなのに、よく覚えていない。


でも、何となく…想像はつく。
あの頃は、情けないほど単純だったからな。


冷たそうに見えて、いつも無表情だったあなたが、少しずついろいろな顔を見せてくれるようになって。

それにつられて、あまり笑うのが得意じゃなかった俺も、

笑みをこぼすことが多くなっていった。


初めて笑った時のあなたの顔、今でも忘れられないな。





……そう、その顔がどうしても頭から離れなくて、再びそれを見たくて、あなたを懸命に追っかけた。無駄なこととは分かっていても。
「星を救う」なんて、ただの口実にしか過ぎなかった。俺にとっては。
あなたに会えるだけで、それだけで俺は…。

大空洞でやっとまた二人きりになることができた。
これが、あなたを思いとどまらせることのできる最後のチャンス。
俺は、密かに期待してた。
だけど……
何も言わなくても、分かってしまったんだ。
あなたの心も、相当揺れていたけれど、重すぎる罪の意識が頑なに邪魔をしていたんだろうな。


……あなたは、何一つ言葉を発することなく…表情を消し去った……。





危機一髪で大空洞から脱出し、星の危機をなんとか回避できて、
本当は喜ぶべきなのだろうけど、出来なかった。
とうとう本当に決着がついてしまった後、
崩壊する足場から助けようという意志のもとに俺に差し出された大きな手。
あれは、あなただったんだよね?


どうして、俺を残して星に還ってしまったんだ?

どうして………




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