銀と金のマテリア【短編集】


□ある夏の夢
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誰かに手を引かれ、暗がりの中を走っていた。
後ろは真っ暗で何も見えない。
が、暗闇から何とも言えない圧迫感を感じる。
何者かが、俺たちを追いかけてくる…ような。
見えない手から逃れようと、必死に足を動かすが、うまく走れない。

俺の前も、真っ暗だ。何が待ち構えているのか、全く分からない。
俺の手を引く人物の、長い銀髪だけがはっきりと見える。
時折転びそうになる俺を気遣い、走るペースを合わせてくれる。
一体、この人は誰だろう?
俺の記憶には存在しない…と思う。

その人の顔は見えないのに、
行き着く先に何が待っているのか分からないのに、
不思議と不安は感じなかった。
繋いだ手のあたたかさが、俺を落ち着かせる。

ただ、背後から迫り来る何かが…………。



………。





急に目が覚めた。
はぁはぁ…と、荒い息をつく。
体中にかいた嫌な汗が、さーっと引いていく。

…変な夢を見たもんだ。

だるさを訴える体を、のろのろとベッドから引きはがした。
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