白黒羽扇
□黒が白に"染まる"とき・1
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最近、何かがおかしい。
頭の中…いや、胸の中に何かが住み着いたようだ。
何か……?
いや、本当はわかっている。認めたくないだけだ。
本日何度目かの溜息をつき、目の前に積み上がった書簡の一つに手を伸ばした。
余計な事は考えるな。その間に仕事はどんどん溜まってゆく。
それでも、気持ち良い風を取り入れるために開け放たれた窓に、つい目が吸い寄せられてしまう。
ここは、魏の都の中枢から少し離れているとはいえ、敷地内である。警護も配置されている。
こんな窓から、奴が来るなどあり得ないし、あってはならない。
しかし、この小さな窓から見渡せる空は、奴につながっているのだろうか?
奴も、同じ空を眺めているのだろうか?