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デッドside
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「テッド、ある生徒が元気がないのです。風邪では無いのでしょうが…とにかく診て頂けますか??」
とある孤児院の院長から頼まれて来てみれば、そこにはベッドに横たわるリドルくん。
あらら…。
こちらとしては、泣きながら眠る彼から記憶を消した身。
更に私はその後、彼の手から大切な手紙をもぎ取った。
ユウから頼まれた事とは言え、リドルくんが忘れているとは言え…
かなり気まずい…。
記憶を消したのは3ヶ月前の事。
しかし迫り来る罪悪感。
正直やだなぁ〜。
「リドルくん具合はどうだい??」
何の返事もない。
「ちょっと診せてね」
そう言ってリドルくんの体を診る。
少しやつれたように見える…
「特に風邪とかじゃないみたいだね。…リドルくん、ご飯食べてるのかい??」
リドルくんはじっと下を見ている。この様子じゃご飯もまともに食べていないのだろう…
でも…何で??
悩んでいると、リドルくんが口を開いた。
「薬売りさん、ユウの事覚えてますか??」
ドキリ胸が鳴る。
何でその名を…??
私はユウに関する全ての物を消した。ベッドも机も手紙も…記憶だって。
「知らないなぁそんな人。」
目に涙を浮かべてうつむくリドルくん。
…覚えているのだろうか。
「…どんな人だったんだい??」
あまりに可哀想で、私は思わず聞いてしまった。
「とても…とても大切な人でした」
ユウ…
リドルくんは君の事を覚えていたよ??
私の忘却術を打ち消す程の強い意志。
嗚呼、なんて残酷なのだろう。
リドルくんに栄養のある薬を渡し、私は部屋を後にした。
リドルくんは私の忘却術を打ち消した。正直信じられない。
ふと花壇に目をやると、見事に咲き誇る青い花。
一つひとつは小さいが、とても美しい。
後ろには
『エゾムラサキ』
と上手いとはとても言えない字で書かれてある。
エゾムラサキ…??日本名かな??この花の名は『忘れな草』。
花言葉は
“私を忘れないで下さい”
「君も力を貸したのかな??」
青く、青く咲き誇る花。
私は空を仰ぎ見る。
いつも元気に笑っていた
彼女の事を思いながら。
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