奴隷忌憚

□奴隷忌憚−第2幕−
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「ただいま、兄貴」


「お帰り、人識くん。それに……闇識くんも」


「…………た、だいま」



絵本園樹に綱吉の診断と手当てをしてもらってから、人識と闇識は家へと、双識たちの下へと帰ってきた。


人識はどうなのか不明だが、闇識にとっては2年ぶりの家だった。


けれど、懐かしいなどと思える程の心の余裕は今の闇識には無い。



中から軋識の声が聞こえてきた。



「早く中に入れてやるっちゃ、レン。ノアの主人を寝かせてやるのが先決っちゃよ」



ノア。



久々に呼ばれたその呼び名。
自分が持つ刀《黒闇血識(ノア)》の名であり、自らの通り名の1つ。


トンファーなど、とっくに置いてきた。
これから先はもう必要の無い物だから。


「ふむ、そうだったね。さ、闇識くん上がりなさい」


腕に綱吉をかかえて、闇識は部屋へと向かった。


部屋の中には曲識もいて、心配そうに闇識を見やる。

その視線に気づかないふりをして、闇識は部屋の中のソファーに綱吉を横たえた。


「おや……随分美人な子じゃないか」


「……レン兄さん。一応言っておくけど、綱吉様は男だからね」


「…………嫌だなぁ、分かっているよ!」


「…………その間はなんだ、兄貴」


人識に突っ込まれて、双識は目線を逸らして笑う。



「……レンの事は置いておくのが悪くない考えだ。それよりノア。僕は君の話を聞きだい」


「そうっちゃ。いったいなにがあったのか、詳しく教えて欲しいっちゃ」


「……トキ兄さん、アス兄さん……。わかった。話すよ」



彼等はおそらく、大体の事は把握しているのだろう。


けれど、それでもきっと。
ちゃんと闇識の口から聞きたいのだ。


それが闇識にもわかった。だから、彼は全てを自ら話し始めた。
その瞳は決して、綱吉から外すことなく。























「……成る程。その女、随分面白い事をしてくれるね」


面白い、などと全然思っていない声音で双識は呟いた。


軋識はキャラ作りはどこへか無表情で、曲識はその優しげな顔を厳しくしかめていて、人識はイライラとした顔で、片手のナイフをクルクルと回している。


ありきたりな表現を使えば、全員が激怒していた。


「……さてと。報復させてもらわなくてはね?」


「そうっちゃね。一族郎党……いや街ごと、組織ごと潰してやるっちゃ」


「……悪くない。ねぇ、ノア?」


「かははっ、……おもしれえ」


だが、彼等を止めたのは闇識。


「……悪いけど。まだ、ダメだ。僕は零崎だけど、それ以前に闇口なんだ。綱吉様に命令されない限りは、動かない。……兄さん達も、動かさせないよ」


「闇識、でもなぁ……、」


「人識、なにも報復そのものを否定するわけじゃない。けど、ただ虐殺を虐殺するだけじゃ僕は、満足出来ない。綱吉様を傷つけたんだ、苦しんで苦しんで苦しんでもらわなきゃ、割にあわないよ。それでも、合わないだろうけど」


「ふむ……」


まるで話すごとに重くなっていくような闇識の言葉に、双識は少し考えるような素振りを見せる。
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