書庫1

□いざ、賤ヶ岳!
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三成に呼ばれ、左近は三成の部屋へ向かう。

「殿、お呼びとの事で、参上致しました。」

左近が廊下から呼びかける。すると『入れ』と三成がこたえるので、左近は部屋に入った。三成は、手に書状を持って左近をみている。そして左近が座ると、その膝元に書状をバサリと寄こし、目で『読め』と言った。

「秀吉様からですか。えぇと、三成もぜひ参加せよ…その際には左近も同道するように…んん…?」

左近は顔をあげる。

「天下一美女決定戦へのご招待って…殿は一応、男ですが?」

ポカンと言うと、

「一応じゃなくとも、男だ。…で、どうする左近?」

「この忙しいのに、行くんですか?」

左近は書状を巻きながら言う。

「し、しかし、招待されて行かぬのは…」

「仕事ではなく、遊びのようですから。絶対ではないかと。」

三成があらぬ方向を向き、

「しかし、秀吉様からの誘いだし…」

と言葉を濁すので、左近は笑った。

「殿…行きたいなら行きたいと言えばいいでしょう?」

三成はキッと左近を睨み、

「べっ…別に行きたい訳ではないぞ!俺は…」

「はいはい。ご招待だから行くんでしたね?そうしましょう。」

左近は三成に寄り、書状を返す。書状に手を伸ばした三成の手を、左近がつかんだ。

「決定戦などしなくても…結果は火を見るよりも明らかですがね?殿より綺麗な人なんて…」

熱っぽく、三成の耳元で囁く。

「なっ…しゅ、出発の準備をしろ…!」

三成は真っ赤になって立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。

「可愛い人ですよ、まったく。」

左近は見送った。




そんなこんなで、主従は今、決定戦の会場の賤ヶ岳にいる。広間に集まり、開始を待っている所だ。部屋は招待された面々とその同伴者で、賑やかだ。

「豪華な顔ぶれですな?」

左近が言う。

「そうだな、おねね様にお市さま…濃姫様に阿国…それにギン千代。本多の娘と明智の娘か…。」

「ですが、敵はいないようですな?」

左近が笑った。


「みんな、よく来てくれたな!」

主催者の秀吉が前に立ち、声をあげた。

「決定戦は総当たりで行う!どちらがより美しいか、より仲睦まじいかを議論してもらうで!最終的に、勝ち星が一番多い者が、天下一美女に認定される!では、始めるでぇ!」

いよいよ、決定戦が開始された。


まず三成の所に来たのは、阿国だ。同伴者は前田慶次。

「やっぱり美女と言えば京女だぜ!この言葉遣い…最高だろ?」

そう言われて阿国はホンワカ笑った。確かに、その姿はしとやかで美しい。

「まぁね…ですが、阿国さんて出雲の人でしょ?出雲は京ではないわなぁ。」

左近にそう言われ、慶次は槍を飲んだような顔をした。

「いや、でも他にも理由はあるぜ!例えば…えーと。つまり、アレだな…その〜。」

「ちょっと、慶次はん!?」

しどろもどろの慶次を阿国が睨む。

「美女いうたら、ウチに決まっとるやろ?ウチは巫女や。巫女といえば神さんの妻…神さんにも愛されるほどって事や。お神楽も舞えるしなぁ。」

「神と人の美しさの基準は同じですかね?それに…うちの殿だって、扇を持たせれば右にでる者はいませんよ。」

左近にそう言われ、阿国が黙ってしまった。これで、三成の勝ち!


次に、ガラシャが孫市を伴ってやって来た。

「まご、わらわの良い所を、三成に言うてやるのじゃ!」

「えっ!あー、そうだな…子犬っぽいところ?どっちかって言うと癒し系ってカンジ…?」

「まご…全部疑問形じゃぞ…。」

「そう言われてもなぁ。お嬢ちゃんは俺の守備範囲じゃないから…まぁ、そこがいい所かな?」

そこで、孫市の目が慶次をとらえる。

「慶次!お前も来てたのか〜。」

垂れ目の目をますます下げて、孫市は慶次の所へ行ってしまった。

「まごー!?」

その孫市を追い、ガラシャも行ってしまう。これで、三成の勝ち!

「三成、勝負だ!」

次に現れたのは、島津義弘を従えたギン千代だ。

「これは勇ましいお嬢さんだ。」

左近が挑発する。

「なっ…お嬢さんではない!立花だ!これっ島津、なにをボヤボヤしておるのだ?早く援護せよ!」

ギン千代がイライラした様子で言った。

「そうですなぁ。まぁ、長所は気が強い。男勝り。そんな所ですな。」

義弘が面倒臭そうに言う。

「おいっ、島津!全然援護になっていないぞ!貴様、やる気はあるのか?それとも、ここで立花と一戦交えるか!」

「ふん、鬼島津がこんなお遊びに付き合えるか!来い、ギン千代!まっぷたつにしてくれるわい!」

二人は武器を交え、もつれ合い、火花を散らして庭の方に消えた。
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