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□鏡映しでわかること
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「た・・・玉章・・・ど、どこか悪いがか?」

「犬神?」

「お前がこげんなことするなんて、おかしいぜよ。どこか打ったがか?親父さんに何か言われたがか?」

「・・・」


嬉しいが正直、恐い。

心配になり同じ目線になるようにしゃがみこんだ犬神に玉章は思いっきり頭突きを食らわした。


「いたあぁああああ!!!!」

「叫ぶな、犬。」

「あ・・・いつもの玉章じゃあぁあああ!!!」

「だから、叫ぶなと言っているだろ。」


抱きつこうとするとするりと逃げてしまう。

そんな態度もいつもの感じがするので、いちいち凹んではいられなかった。

犬神が『いつもの玉章じゃー!!』と喜んでいるのを聞いてか、ピクンッと肩を刎ねさせたかと思うと急に抱きついてきた。


「ごめんなさい。ご主人さまが僕に触れてくださったのに・・・」

「へ?」

「お勤めご苦労さまでした。あんな汚い人間どもの中で生活していたんですから、さぞかし息もつまったでしょう。僕の息で申し訳ないですが。どうぞお吸いください。」


と、言うや否や唇を合わせてきた。

急に来たのでなんの心の準備もなかった。

目の前には玉章の顔がある。

女のように長い黒い睫がかすかにゆれている。

額にかかる黒い髪からは甘く爽やかな匂いがした。

触れている唇の面積は少しだけだ。

物足りない。

それはもう、『動物の本能』としか言いようがない渇望感だった。


「んぐっ!!!!」


玉章の腰を掴むやいなや、それまで控えめに触れていた唇におもいっきり噛み付いた。





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