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□鏡映しでわかること
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「何をやっとるがか?玉章。」
衝撃はなんと表したらいいのか犬神にはわからなかった。
今日も今日とて、玉章の『暇つぶし』のために名前も顔も知らない男どもに殴られて、貶されていた。
その見返りを求めているわけではないけど、すべての行為が終わった後の玉章の哀れなモノを見下ろし瞳に己だけが写ることが許されているのだと思うのが一番の至福のときだった。
が、今日はそれがなく。
それどころか、まったくこちらを見てはくれなかったのだ。
授業中もぼーっとしていたので帰りの際
「具合が悪いのなら送ってやるき」
と声をかけたのだが。
「犬の分際で、息をかけてくるのはやめてくれないか?」
と冷たくあしらわれただけだった。
ちょっと、凹みつつ帰宅し、自室の襖を開けて絶句した。
「おかえりなさい!」
玉章がいた。
「な・・・え?は?」
「おかえりなさい!!!ずっと待ってました」
「は?ちょっと・・・え?」
ただでさえ、玉章が自室にいるのが信じられないのに、その上玉章の首には首輪が嵌められていた。
前に玉章から貰ったものは犬神の首にあるので、新しいもののようだ。
さらにはヒザを付き、ぎゅっと抱きついてくるではないか。
(何かがおかしい・・・絶対におかしい)
冷静になりたい反面、なかなかしてくれない行動に本能は素直に喜んでいた。
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