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□人の振り観て、我が振り治せ
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ひとまず、犬神は困った。
新たな、虐めの一種かとも思ったが、人の気配はない。
それか、主の新たな興かとも思った。
しかし、見晴らしのいい廊下を見ても、向かいの校舎を見ても、鼻を鳴らしても。
主の気配はしなかった。
犬神はますます困惑した。
「えっと・・・」
「迷惑じゃなかったら受け取って欲しいんです」
「・・・」
目の前に差し出されているのは可愛らしくラッピングされたチョコ。
差し出しているのは、たぶん同じクラスの女子だ。
犬神は主以外興味がないので、学校の人間には顔にモザイクがかかったように、不明確であったし名前も覚えてない。
それが自分を虐めてる相手であっても同じだった。
主以外の生き物に興味がない。
だから、目の前の同級生にも興味がないのだが。
差し出されたものをどうしたらいいのか、わからない。
さすがに、今日が何の日かは知っている。
自分には最悪な日になることも。
「俺に?」
いつもなら、生徒会室に行き主が自分以外の人間からチョコを笑顔で受けとるのを見て、どす黒感情を飲み込んでいるはずなのだ。
それが、どうしてこうなった?
「迷惑だった?もしかして、こんな所見られたら、また・・・」
「あぁ、それは心配ないき。お前の方が危ないぜよ」
「それでも、 くんに渡したいの」
チョコなんて、もらったこたがない。
人生初の出来事に困惑した。
この場合はどうしたらいいんだ?
軽いパニック状態の彼は唯一の手本を思い出した。
そして、緊張しながら自分にチョコを差し出している女子の手を握り、微笑む。
「まっこと、ありがたいぜよ」
女子は顔を真っ赤にした。
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