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□天邪鬼
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「・・・。えーい。腹が立つの・・・」


入り口のドアに向けて人形を投げる。


「あのクソ魔術師がー!!!」


ゴトッッ


カチャッ


ドアが開いたのと、人形がドアに当たったのは同時だった。

そして、入ってきたのはその『クソ魔術師』であるケンプファーだった。


「あ。」

「・・・危ないですよ。伯爵夫人」

「もう・・・し訳ありません。お怪我は?」

「ないですよ。それよりも。・・・すごい部屋ですね」


ズカズカと人の(しかも女の)部屋に入ってくる。

ヘルガとノイマンの二人はさっと跪いた。

お怪我は?と問うヘルガは歯軋りをしていた。

その隣でバルタザールはハラハラしていた。


「何か用があってのでは?魔術師殿」

「それなのですがね。・・・申し訳ないのですが、忘れました。」

「は?」

「先程まで覚えていたのですがね。この汚い部屋に呆気にとられて、忘れてしまったみたいなんですよ。」

「・・・汚い?・・・」


普段のヘルガなら埃一つでも落ちていたらなかり文句を言うほどの潔癖症。

本人だって今のこの部屋の状態は嫌だった。

が、当たるものが他にはなかったのだ。

この男のせいで。

抑えていた感情が爆発した。

ゆらり立ち上がりギロリとケンプファーを睨む。

手には杖が握られていた。


「・・・汚いじゃと?」

「伯爵夫人?」

「誰のせいじゃと思っておる!!!このクソ老人が!!!」


ケンプファーに飛び掛る前にバルタザールが止めに入った。

それでもヘルガは止まらない。


「どけっ!バルタザール卿。」

「落ち着いてくださいって」

「黙っておれ!この男さえ・・・離せっ」

「魔術師殿は早く帰ってください」

「逃がすかぁ!!!」


二人でもみ合っていた。

その様子がおかしいらしくケンプファーは暢気に笑っている。





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