WJ系

□若菜と山吹
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その日は晴れだった。

若菜は大きくなった腹を抱えて、食事や掃除。

洗濯などをしていた。

夫の鯉伴はもちろんだが、側近たちも無理をするなと言うが、何もしない方が体に悪そうだ。

と若菜は考えていた。

体を動かしている方がつわりもひどくないので若菜は床掃除を苦しくない程度に毎日ちょっとずつやっていた。

そして、その日。

若菜は広い奴良家の入ったこともない場所に立っていた。


「こんな場所・・・あったのかしら・・・?」


本家の一番端。

誰も来ないようなその場所には山吹が咲いていた。

庭の狂い桜と同じように季節感がないようなその山吹に若菜はそっと近づいた。

綺麗に咲き乱れているその山吹の向うに廊下があった。


「なんだろ・・・」


誰も入ったことのないような庭はどうしてだか綺麗に手入れされている。

さらに、床もほこりっぽくはない。

誰かが今でも住んでいそうなのに気配はない。

妖怪屋敷なのでおかしなことがあっても不思議ではないが、ドキドキする。


「お・・・お邪魔しますね」


古い建物であるこの奴良家はところどこと床が軋むがこの離れはそんなことはない。

滑るように進めば、一つの部屋に着いた。

そっとふすまを開ける。

中も綺麗に掃除されており、家具も今まで誰かが使っていたような気さえしてくる。


「すごい・・・誰の部屋かな?」


もしかして、鯉伴さんのお母さんの部屋かしら?

と、若菜はそっと入った。

途端に、薫るのは山吹の匂い。

そして、なんとなく出来心というものがわき上がり、若菜はそっと手を伸ばした。






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