WJ系
□狐と狸と誰?の化かし合い
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リクオはゆるく首を振った。
眉は困ったようにハの字になっている。
丸っこい眼は、今は涙目である。
「や・・・やだ」
「大丈夫だよ。リクオくん。何も恐くはない」
「で・・・でも」
「僕のことが信じられないのかい?平気だと言っているだろ?」
「そんなの入らないよ」
下校中。
珍しく一人で帰っていたリクオの眼の前に現れたのは玉章だった。
手には何やら怪しい丸いもの。
それを手にひたすら『入れろ』と迫ってくるのは恐怖だった。
リクオはぎゅっと鞄の肩紐を握り締めて首をふる。
「どうだろ?僕の犬は入ったよ?」
「どう考えても犬神さんの方が大きいじゃない。そんなの僕には大きすぎるよ」
「平気だよ。さ、やってみせてよ。アメリカンチェリーのへたを結ぶの」
「なんで普通のじゃないの!それに僕舌不器用だもん。」
「それは僕がレクチャーするよ。実践で」
いや、遠慮したい。
リクオはますます首を振って、距離を取る。
逃げたい。
いや、もう帰りたい。
リクオはゆっくりと後ろにさがった。
「逃げなくってもいいじゃないか。ほんの3分だよ?」
「いや。出来なくってもいいから」
「人生の役に立つのに・・・僕がしたいからやろう」
結局、そっちかい!と心の中で突っ込みを入れつつリクオは逃げようと振り返った。
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