WJ系
□箱入り坊ちゃんは世間知らず
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その日の天気はどんよりとしていた。
さらに空気はじめっとしていて、湿度が高い。
今にも空から大量の水滴がこぼれ落ちるかのような、そんな空気に満ちていた。
リクオは傘を持たずに家を出たので降らなくってよかったと安堵のため息とともに帰宅した。
「ただいま〜。って今日はみんな出かけていたんだっけ?」
だいたいの総会を本家で行うのだが急遽、捩れ山で行うことになり今本家はもぬけの殻だった。
生まれてこの方、これほどまでに家が静まり返ったことなどなかったのではないだろうか。
リクオは落ち着かない不安な気持ちと少しの高揚感で浮足だった。
「そうだ。今日は母さんも出かけていたから、洗濯物は僕が入れなきゃ」
珍しく誰もいないので、母の若菜も友人と出かけていた。
天気が天気なので、早めに洗濯物を入れようと庭に向かった。
「あ・・・れ?」
そこには見慣れない人物がいた。
自分の記憶が正しいのならそれは四国妖怪・隠神刑部狸の八十八番目の嫁の八番目の息子。
玉章であった。
彼の手にはリクオのパンツが握られていた。
「あのっ・・・何してるの?それ、僕のパンツだよ?」
「なっ。リクオくん!?」
「それ・・・」
「違うだ!リクオくん!!僕は早く乾くように、人肌で乾かそうとしていただけさっ」
と、慌てたように玉章はリクオのパンツを自分のシャツの中に入れていた。
どう考えても怪しいが、リクオはそんな事もできるんだ。程度にしか思ってなかった。
書き手・深夜胡(1/4更新)