WJ系
□晴れ舞台は一度きり
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若くして身ごもってしまった若菜に何百年と生きてきた妖怪はきっぱりと
『嫁に来い。』
と言い切った。
今だに、なんで頷いたのか若菜自身も不思議だったのだが直感的に「この人とならやっていける」と幼いながらに思ったのだ。
「へ〜、今の時代には祝言用の衣装もたくさんあんだねぃ」
「うん。でも鯉伴さんの家はしきたりとか厳しそうだから、白無垢かな?」
若菜の部屋でまったりと結婚雑誌を二人で読んでいた。
若菜の両親は最初の方は戸惑っていたが「それで若菜が幸せなら」と快く頷いてくれた。
今ではどうどうと玄関から入ってこれるようになった(いつもは妖力発揮していた)。
「お袋の時は時代が時代でぃ。若菜は好きなもん着たらいいぞ。」
「でも・・・その幹部の人とか」
「気にすんな。俺と若菜の問題だ。言う奴は言わせとけ」
「うん。」
嬉しそうに笑って、『やっぱり、ドレスもいいかも』と若菜は雑誌を捲る。
何百年と生きてきて愛した女もそれなりにいた。
が、若菜ほど心から一緒にいたいと思うものには出会わなかった。
(これも親父譲りってか・・・)
母も人間だった。
綺麗な人だったのは覚えているが、若菜ほどではない。
「若菜」
「ん?」
「愛してるぞ」
ぼっと赤くなって頷いてくれる将来の嫁に鯉伴は満足気に頷いた。
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