その他
□コンビニ(遙凛)
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※モブバイトいます。下ネタ注意。
昼間は目立たなかった明かりも、今は大いに人々の注目を集める時間になった。
金曜の21時に近付いたこの時間なら、黙っていても客足はどんどん増えていく。
店内清掃オーケー、ホットスナックオーケー、レジ周りは任せてあるし、後は商品を並べつつ値引きシールを貼って……――
やる事はまだまだあった。
凛はテキパキと慣れた動作で商品を陳列していく。
夏休み期間中だけのアルバイト。
高校生二人分の学費は結構な出費だろうと思い、少しでも足しになるようこっそり始めたバイトだった。
競泳に集中して欲しいと母は言うかもしれない。
しかし授業がない分練習時間もきちんと確保出来ている。
バイトはロードワークより運動量は落ちるものの、その変わり練習中はそれを取り戻そうという気持ちが働くせいか、タイムも上がってきていた。
バイト仲間や店長は良い人ばかりだし、今の穏やかな環境に凛は大変満足している。
普段一緒にいる個性的すぎる面子には自分常識が通用しない事もしょっちゅうなのに、ここでは衝突も齟齬も生じない。
力仕事は他人より出来るため、進んでやれば喜ばれるし、シフトは夜に絞って入らせてもらえた。
ひとつ問題があるとすれば――
「げっ…………!?」
たまに問題のある客が来る事だ。
「いらっしゃいませ」
レジ担当の女子大生バイトが明るく挨拶する先には、やけに綺麗な目をした黒髪の男。
「チッ。また来たのかよ……」
せっかく鮫柄の寮と岩鳶町の中間にあるコンビニを選んだのに、なんでバレたんだ。
――先週も先々週も繰り返した疑問は未だ解消されない。
遙が凛を一瞥して店内を物色し始めると、凛は短くボヤいてまた作業に戻った。
忙しさがピークを迎える前に、やらねばならない仕事はまだまだ残っている。
「…………ハルのやつ、何買うつもりだ……?」
――とは言ったものの、遙の買い物がなんなのか気になって、凛はチラチラと棚の陰から様子を窺う。
何やら衛生用品のコーナーで品定めしているようだ。
遙の横顔は真剣そのもので、暫し逡巡した後、結局イルカのマークの描かれた箱を手に取った。
(エッ……あれ、確か………)
ピッ。
「こちら一点で××円です」
迷いなく台に置かれ、たった今会計が完了した箱。
パッと見では中身が何かは分からないが、ほぼ毎日商品に触れている凛には分かる――それがコンドームだという事が。
「なっ……!あいつ……信じらんねぇ……」
普通知り合いのいる店でそんなもん買うか!? しかもそれだけを!
みるみるうちに顔面が紅潮していくのが自分でも分かった。
こんな顔、遙には見られたくない、と凛が休憩室に引っ込もうとした――そんな時に限って遙の目は凛を捉えて離さない。
真っすぐに。ひたすら真っすぐに。他の物などまるで目に入っていないかのように凛だけを見つめて、遙は近付いてくる。
熱くなった顔を見られまいと、凛は咄嗟に顔を逸らした。
「な、なんだよ。俺は今バイトしてんだ。お前に構ってる時間なんかなっ――」
「凛……バイト終わったらうちに来い。待ってる」
「…………ッッ!」
至近距離でそれだけを言い残し、遙は颯爽と店を後にした。
(何だってんだよぉ……ハル……)
囁かれた言葉が、まだ耳元でさわさわ鳴っている。
直接触れられた訳でもないのに、凛はへなへなと脱力して、その場に崩れ落ちた。
「…………今の彼氏さん、ですか?」
「はぁあ!?」
――――
余談ですが、「イルカ コンドーム」で検索かけると業務用がヒットして、「さっすが遙ちゃん!(CV代永)」ってなるので、続きは業務用に置き換えてご想像ください。
以下、その他の皆さんにも買ってもらいました。
御子柴→「よう、松岡!コンドーム買いたいんだがお前のオススメ教えてくれ!」(超オープン)
凛「……部長。もうちょっと恥じらいを持ってください」
真琴→店員が女性だと気が引けるし、かといって凛ちゃん本人に会計されるのもどうなんだろうとかごちゃごちゃ考え過ぎて商品持ったまま固まる。(別の店行け)
渚→「やっほ―、凛ちゃん!お疲れ様。あのね、今度みんなで遊園地行こうって話してたんだけど〜」(通常運転。どうでもいい話をする余裕がある。普通に買える)
怜→恥ずかしくて通販に頼る。
2014.5.26