短編
□私も褒めて!
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−本日のランチ−
・御飯
・麩の味噌汁
・焼き魚
・筑前煮
・茄子の漬け物
忍者食にしては豪華。普段の食事にしては質素。それが今日の私たちの昼食だった。
私の嗜好には合わないこのメニューが、何故今日の昼食なのかというと、何の事はない、これしか残ってなかったからだ。
図書室の主、中在家先輩が実習で不在の今日、突然舞い込んだ図書委員会の仕事に、委員会の面々は作業に終われていた。
大変そうだったので私も手伝いに入ったのだが、あまり戦力にならず、結局作業が難航して、昼食を取るのが遅くなってしまったのである。
はじめは図書委員会みんなで食べていたのだが、きり丸と久作は用事があると先に席を立ったため、今食堂に残っているのは私と雷蔵と怪士丸だけだ――といっても、雷蔵は自分の分を既に完食して、私と怪丸が食べ終わるのを待ってくれているのだが。
しかし困った事に、私の膳の上からは茄子の漬け物がなかなか片付かない。
まずあの紫色に食欲を削がれるし、茄子独特の風味も駄目で、口に入れた瞬間、すぐにでも吐き出したくなる。
どちらかと言えば味の好みが幼い私は、漬け物自体そんなに好きではないので、茄子の漬け物なんて最悪だった。
どのタイミングで食べようかと悩みながら食べていたら、いつのまにか他の皿は空になり、漬け物だけが残ってしまった。できればこのまま食べたくない。
だが、お残しは許してもらえないし、どうしよう…
そう思った時だった。
「どうしたの怪士丸?食べないの?」
雷蔵が、怪士丸の箸が止まっている事に気が付いた。
漬け物が入った皿と見つめ合ったまま、怪士丸はいつもにも増して暗い顔をしている。
「ぼく…茄子苦手なんです……。」
怪士丸は魂が出てきそうな程、深い深い溜息をついた。
ああ…お前もか、怪士丸…。
そうだよなぁ…嫌だよなぁ……
「好き嫌いは駄目だよ。ちゃんと食べなきゃ。」
「でもぉ〜……」
雷蔵の言葉がぐさりと胸にささる。
確かに残すのは良くないよな…。でも、やっぱり茄子だろ?漬け物だろ…?
………食べたくないよなぁ〜
「じゃあ一口だけ食べて!残りはボクが食べてあげるから。」
ね?と雷蔵は微笑んで、怪士丸に食べるよう促した。
途端、怪士丸はハッとした表情を浮かべ、しかしまた迷い始める。
その様子を見ていて、私は思った。
――そうだ、私の分も雷蔵に食べてもらえばいいんだ!